自宅のある南森町にカキオコを看板に掲げる、その名もズバリひなせという店があったからです。
食べに行くなら旬の時期。
しかし昨冬はチャンスが無く、今年もシーズンが終わろうとしています。
どうしようかと悩んでいると、数日前にテレビで「3月の日生の牡蠣はよく肥って美味しい」という情報を得ました。
もう決定です。
週末の土曜日、大阪駅を9時発の新快速に乗り、姫路、播州赤穂と在来線を2回乗り継いで、2時間かけて岡山県までやって来ました。
2,200円もかかるのでSuicaをチャージしたのに、精算しないと出られないというなんとも寂しいローカル線の駅。
目指すお店は駅から徒歩10分ほど。
途中の魚屋では、山積みの牡蠣。
期待が高まります。
漁師町の細い路地裏にある古びた民家の一階。
ここが数ある日生のカキオコの店の中でも、いろんな意味で評価の高い浜屋 みっちゃん。
貴重な観光資源に町の力も入っているようです。
なんだか可愛らしい看板です。
お客さんが食べ終わる度に次の人が呼ばれます。
メニューは4種類ですが、誰も何も言葉を発しません。
全員暗黙の了解のもと、カキオコを食べているのです。
女主人のみっちゃんは黙々とカキオコを焼いています。
見越して焼いているので、カキオコ以外のメニューは頼めない状況です。
もっともここに来て豚お好み焼きを頼む人もいないのでしょうが。
冷蔵庫には大量の生牡蠣。
裏方の仕込みはご主人と思しき年配の男性です。
広島お好みのようにクレープ状に薄く生地を引き、そこへみっちゃんがキャベツを手づかみでのせます。
次はタッパーの生牡蠣をやはり手づかみでザルに入れて水洗いし、そのままドバっとキャベツの上へ。
すべて目分量。
長年の勘と経験が為せる業。
ある程度火が通ったところで牡蠣の上にも生地をかけ、そこから目にも止まらぬ早さで大きなカキオコをひっくり返します。
何度撮影しようとしても撮れなかった神業。
動画で撮れば良かったな。
ひっくり返した瞬間に、牡蠣の水分が一気に熱せられて「ジュー」といういかにも美味しそうな音がします。
そろそろ私の順番です。
「次の方、どうぞ」
とみっちゃんに呼ばれます。
並び始めて35分後でした。
誰もビールを頼んでいないという珍しい状況でしたが、私は勇気を振り絞って注文しました。
缶のまま、コップは無し。
「はい、食べて下さい」
と私の目の前に見越しで焼かれたカキオコが出てきました。
有無を言わせぬみっちゃんの気迫に押されてか、それとも順番待ちの店内のお客さんのプレッシャーのせいなのか、皆黙々とカキオコを食べています。
和やかに談笑するなど許されない雰囲気。
断面から見事な牡蠣がいくつも顔を覗かせます。
憧れのカキオコ初体験です。
プリプリの牡蠣がこれほどお好み焼きにマッチするとは思いませんでした。
これは確かに美味しい。
みっちゃんが私に何か話しかけてきます。
写真ばっかり撮っているから早く食べろと怒られたのかと思ってビックリしました。
「はい?」
と聞き返すと
「ソースはいいですか?」
と言うのです。
ソースが足りなければ、足してあげるよというお決まりのメッセージでした。
カキオコが大きすぎて、食べきれずにパックで持ち帰る人もいます。
「いいですよ、残して。持って帰って下さい」
と優しく声をかけて持ち帰りのパックにカキオコを入れるみっちゃん。
無口で強面な感じとは裏腹に、実に優しい方なのです。
美味しいだけでもなく、風情があるだけでもなく、みっちゃんその人こそがこの店の人気の最大の理由であることは間違いありません。
私は今日の炭水化物ツアーのために昨夜の夕食を制限し、朝もジュース一杯で日生まで来たので難無く完食です。
別のお客さんがかき焼きを注文しました。
鉄板に牡蠣を10個ほどワイルドに投げ入れます。
かつを節を振りかけた後、味の素を大量に投入。
実はカキオコにも味の素を大量に振りかけていました。
そんなみっちゃんがなんだか懐かしくて嬉しくなります。
そこへ葱を入れて醤油と七味で味を整え、豪快に炒めます。
胃袋に余裕があれば、是非頼みたい一品。
お会計を済ませて再び日生駅へと戻ります。
駅に戻ると、目の前の港から小豆島行きフェリーがちょうど出港するところでした。
小豆島も行ってみたいなぁ。
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浜屋 (お好み焼き / 日生駅)
昼総合点★★★☆☆ 3.5
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