彼を軸に支社のいろんな人たちとの交流を兼ねた飲み会も、もう何回目でしょうか。
天満、梅田、十三あたりが多いのですが、今日は新世界。
初の参加メンバー、営業のN君と三人で。
地下鉄御堂筋線動物園前駅で下りて、ジャンジャン横丁へ。
私が学生時代の頃と比べると、ずいぶんと綺麗になり、治安も良くなりましたが、昭和レトロな雰囲気はそのまま。
すっかり観光地に変貌した新世界は、私にとっては少し違和感がありますが、それでもやっぱり好きな町。
通天閣に向かって歩きます。
パリを模して造られたというこの町は通天閣から放射状に道が伸びています。
嘘のようなホントの話。
その一本、通天閣本通を入ってすぐの所にある老舗蕎麦屋が今日の狙いの店。
総本家 更科。
実に味わい深い趣のある店構え。
中に入って更に感心しました。
高い天井、大きな窓、全てが綺麗に磨かれています。
この手入れは相当大変そう。
少し遅れるというN君からの連絡。
まずは二人で乾杯。
東京の蕎麦屋飲み、といっても定義があるわけではありませんが、私が好きなのは下町の昭和レトロな蕎麦屋で一品をいくつか摘まんで最後にもりかかけで締めるというスタイル。
名店と呼ばれるかけが1,000円以上するような店は対象外。
高くて旨いのは当たり前。
サラリーマンの正しい蕎麦屋飲みは安くて旨くて一品が豊富でなければなりません。
「ここは使えますよ」
と私の行きつけのバーホワイトラベルでよくお会いする常連のIさんから推奨された店。
店の雰囲気、一品の充実度、そして何より町の雰囲気が堪りません。
お値段もかけが500円と合格。
最初は板わさとにしん姿煮から。
箸を付けようと思った所にN君が到着です。
丁度良かった。
板わさのかまぼこが焼きなのは、大阪に来て驚いたことの一つ。
いりとり。
親子丼のアタマになります。
この表現は初めて聞きました。
東京なら親子煮という表現が一般的でしょうか。
とは言え中身は同じ。
東京よりはダシが淡口な分、少し優しい味わい。
なかなかイケます。
蕎麦屋飲みは一人でも出来ますが、私がここに友だちを誘った理由は、数ある卵料理を制覇したかったから。
卵好きの私には堪らない一品がラインナップされているからです。
だし巻き。
少し巻きが平べったい感じ。
もちろん淡口のダシがたっぷり入っているので、フワフワ。
やきとり。
蕎麦屋ですから、ありもので料理を作ります。
串にささっている訳がありません。
タレは醤油ベースで美味。
この店にしては高い1,650円。
蕎麦焼酎の蕎麦湯割り。
私が東京時代定番にしていた蕎麦屋飲みの必須アイテム。
なたね。
これも聞き慣れない名前ですが、おだしのいり玉子と書いてありました。
大阪では菜の花の黄色からそう呼ばれていると後で知りました。
熱燗を頼みました。
N君とは仕事の接点はありましたが、飲むのは初めて。
独特の語り口は知らず知らずに人を引き込む魅力があり、M君を交えて会話が弾みます。
「なんや、まったりした雰囲気やなぁ。地方出張行って飲んでるみたいや」
とM君。
確かに店の外は商店街にも関わらず人通りはほとんどありません。
天井の高い大きな店は、我々以外のお客もなく、テレビの音だけが聞こえて来ます。
でも、私はこんな雰囲気が大好き。
そろそろ〆。
私とN君はざるそば。
彼が大盛を頼んだので釣られて私も大盛を注文。
炭水化物ダイエット中なのですが、蕎麦好きの私はざるそばの魅力に抗う事は出来ません。
更科らしい白さ。
ざるそばと言っても海苔がかかっていないのは、大阪流の言い方なのでしょうか。
東京なら、これはかけそば。
これはM君が頼んだメニューには無い玉子とじあんかけのきつね入り。
久し振りにガッツリと蕎麦が食べられます。
もう少し甘くないといいなと思うつゆに、もう少し固いといいなと思う蕎麦を浸けて手繰ります。
大阪で東京の蕎麦屋飲み、全て同じという訳にはいきません。
それも、また一興。
最後は蕎麦湯。
実はこの店はM君もN君も知っていて、いつか来ようと狙っていたそうで、私の誘いは的を得ていた事になります。
すっかりエンジンも暖まりました。
もう一軒、昭和な店にハシゴです。
二軒目は放射状に伸びる道路のもう一本東の筋、真北に伸びる道沿い、串カツだるまの北隣にある昭和レトロなバーです。
サントリーバーBABY。
一見さんお断り、気ままなマスターが17時から22時までの限られた時間だけ営業しています。
「何でも飲むでしょう?さっぱりしたのがいい?」
と作り始めたのがジン・リッキー。
ジンとライム果汁とソーダでさっぱりと。
乾杯です。
この店はインテリアも見ごたえがあります。
レトロなだけでなく、価値のある調度がそこかしこに。
「これ、珍しいんですよ。もうサントリーにも無いんですよね」
と自慢げにマスターが見せてくれたのはTorys WISTANの缶。
WISTANとはウイスキー炭酸のこと。
今で言えばトリスハイボールということになります。
私は前回も見せてもらいましたが、M君、N君は初めてで興味津津。
もう一杯。
M君はブルームーンのレモン多め。
私はジムビームのソーダ割り。
70歳を超えているとは思えない元気なマスター。
自慢のオーディオシステムからはジャズが流れて来ます。
新世界の事は知り尽くしているマスターの口からは興味深い話がいくつも出て来ます。
今日我々が訪ねた総本家 更科の瓦は特別なものだとか、洗い屋を入れているから店が綺麗なのだとか、だるまは空いた店をどんどん借りて店を増やしているのだとか。
時計は22時を回りました。
お店はそろそろ閉める時間。
動物園前駅へ向かう二人と別れ、私は一人恵美須町駅へ。
振り返ればブルーにライトアップされた通天閣。
「今出て来たBABYの蛍光灯の色と同じだな」
と思いながら、再び歩き始めました。
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