しかし、相倉合掌造り集落から菅沼合掌造り集落へ向かう途中の国道156号線沿いに、とても気になる看板を見つけました。
「熊・豆腐料理」と書かれています。
店の窓にメニューが貼り出されています。
ジビエが大好きな私。
もう、ここで決まりです。
赤かぶが店先に置いてありました。
名産品でしょうか。
昭和58年(1983年)創業とあります。
32年になるということです。
早速暖簾をくぐります。
入口には色紙。
それなりに有名なようです。
質素な山小屋風の食堂。
奥には大量の漫画本。
カウンター席に腰掛けます。
メニューはいずれも魅力的。
全部食べたくなりますが、そういう訳にはいきません。
しかも、一品はことごとく酒のアテにぴったり。
そう思ってメニューを眺めていると、まさにそのお酒のメニューもありました。
ズバリ、お酒のおつまみも。
この近所に民宿とかあるのでしょうか。
飲酒運転にならずにこんな山奥で酒を飲むためには、泊まるしかありません。
「泊まってでも食べたい、いや飲みたい」
と思います。
定番のメニュー。
定食、鍋、麺、丼と書かれていますが、一般的な食材に混じって、ジビエがそこここに。
一品料理も然り。
名物の地豆腐料理もラインナップ。
店主の思いを表現したメッセージが書かれていました
食物連鎖という自然界の掟には、私は賛成派。
先日行った和歌山県太地町での鯨やイルカの捕食も、こうした山奥での獣肉の食習慣も、生きていくためには当然です。
しかし、自然の恵みに対する感謝と畏敬の念は、私もこの店主のメッセージに全く同感です。
鍋か丼か、はたまた熊、鹿、はくびしん、猪、きじか。
全部食べたいけれどそうもいきません。
鍋だと酒が飲みたくなるなと思い、丼にしました。
注文したのは、人生初の熊肉が食べたくて、くま丼。
赤かぶ酢漬けも付いてくることをしっかり確認。
更に名物の五箇山豆腐の冷奴。
そして、すごく気になったくまトロも注文します。
最初にくまトロが出て来ました。
二種類、違う場所で獲れた熊だそうです。
「草の実かブナを食べています。取れた場所が違うので、味が違うはずです」
と店主。
腰の脂身にあたる部位をマイナス64度で瞬間冷凍し、1ヶ月半寝かせてようやく保健所の許可がおりるそうです。
冬眠中のエネルギーが蓄えられている部位ですから、栄養価が高いことは想像に難くありません。
確かに脂の色が違います。
「8度から10度で脂が溶けるので、わさびを醤油に溶くと弾いてしまうから、脂にわさびをのせて食べてください」
と教わりました。
ゆっくり味わって食べたいのですが、みるみる脂が溶けていくのがわかります。
さて、メインのくま丼です。
牛蒡と玉葱、葱と一緒に玉子で綴じています。
五箇山豆腐。
店主の作った大豆を使ったもの。
気になっていた赤かぶの酢漬けも添えられていました。
熊肉は固くては噛み応えがあります。
猪肉に似ていますが、もっと濃密な味わい。
「ゆっくり噛んで、味わって食べてください」
と店主。
しっかり血抜きをしないと臭くて食べられたものではない、と聞いたことがありますが、全く臭みがないのは、上手に処理がされているからでしょう。
自ら獲物を仕留める猟師だからこそと言えます。
「歯ごたえがある」
と言ってもいいほど、しっかりと固い木綿。
「お塩で食べると美味しいですよ」
と教わった時には、既にお醤油をかけた後。
しまった。
それでも、比較的かかっていなかった豆腐に塩をかけていただいてみました。
確かにこの方が、大豆の味がよくわかります。
「最近忙しくなって、自分の仕留めたものだけではまかなえなくなってきたんです」
テレビの取材やネットの情報などで、遠方から来るお客さんが増えたそうです。
今日は平日なので地元の人が多かったですが、土日は観光客中心のようです。
「バイクですよね?どちらからですか」
「大阪からです」
「北陸は海の幸が有名ですが、こういうのもあるんです。冬眠する動物を食べるのは珍しいですよね」
お会計を支払うと、私とお金に合掌する店主。
獣を仕留め、それを食用で供することを生業とするだけに、自然と生き物への敬意の念は人一倍強いようです。
食物連鎖と、自然への感謝の心を改めて考えさせられた、素晴らしい店でした。
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昼総合点★★★☆☆ 3.5
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