彼とは20年以上の付き合いで、当時は別部署ながらもいくつかのプロジェクトを一緒に担当した仲です。
そのS先輩のご卒業のお祝い会をやるべく、私の一年先輩のKさんに声をかけました。
K先輩は早期に退職していて、今は第二の人生を謳歌中ですが、やはり現部署のOBで、私が東京に転勤してきた1987年以来のお付き合い。
もちろんS先輩とK先輩も旧い関係ですが、今は空手の道場に通う仲でもあります。
そんな3人の共通のお気に入りのお店、勝どきのさよりを予約しました。
狭い路地を入った奥、民家を改築したお店です。
やはり、K先輩が一番乗り。
まずは生ビールで乾杯です。
「ご卒業おめでとうございます!」
茹で立ての枝豆。
刺身はお任せの盛り合わせ。
旨い魚がこの店のウリ。
脂の乗ったサンマ。
とろけるスルメイカ。
上物のマグロ。
浅締めのシメサバ。
ビールを二杯飲んだ後は、焼酎に切り替えます。
私が入れていたボトルが残っていました。
宮崎の麦焼酎、高千穂。
K先輩が
「お前、高千穂にバイクで行ってたよな」
と切り出します。
私のフェイスブックを読んでくれているのでしょう。
歴史好き、城好きのS先輩が触発されて会話が弾みます。
私も大阪時代に奈良や四国、九州、北陸に自然と歴史を訪ねてバイク旅をした話を披露し、座は盛り上がります。
ついつい会話が弾んで、酒ばかり飲んで、料理を忘れていました。
サンマの塩焼。
サンマなら日本酒。
貴重な東京の酒蔵、福生の田むら。
マスターも交えて、乾杯です。
去りゆく夏を惜しんで、はもの天ぷら。
大阪ではよく食べました。
こんな時に大阪ノスタルジー。
丁寧に骨切りし、ヤングコーンを巻いた二代目のアイデア料理。
この店が築地にあった頃はまだ小学生だった彼も、今は立派な料理人。
そんな息子を見つめるマスターの柔和な顔を見ると、かつての傳法な頑固親父もすっかり角が取れた感。
あまりにも飲みやすく、会話も弾むので喉が乾いて盃が重なります。
「東京新聞に載ったんですよ」
と奥さんが新聞を持ってきました。
頑固親父もなんだか可愛らしいキャラクターになっています。
田むらは三杯目。
焼酎もかなり飲んだので、明らかに飲み過ぎですが、明日は土曜日だから、まあいいでしょう。
「お吸い物作ったよ」
とマスター。
アラで出汁を取った濃い目の吸い物の味に、かつてランチに週三ペースで通っていた頃の懐かしい思い出が蘇ります。
あの頃は私も三十代でした。
S先輩、K先輩を交えて記念写真を撮影してお開き。
表に出ると、どんどん姿を変える勝どきの風景が目に入りました。
もう4年後の夏は、東京オリンピックです。
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