住吉の山城屋酒場を早めに切り上げて、再び都営新宿線に乗り終点の本八幡へ。
地上に出て、京成八幡駅の踏切を渡ります。
踏切を渡ってすぐの路地を右へ。
線路沿いにある小さな酒場が今日の二軒目。
やきとり「竹千代」。
通勤の電車から視界に入っていたはずですが、初めての訪問。
親しい飲み友達のお薦めです。
かなりアウェイ感のある店構えですが、私は平気。
暖簾を潜って店に入ると、相当な激狹店。
四畳半くらいのスペースにテーブル二卓と短いカウンター。
10人も入れないお店です。
先客は三組。
私は辛うじて空いていたカウンターのスツールに身体を滑り込ませます。
やはりアウェイ感は半端ないですが、そんな一見の私にマスターはにこやかに話しかけてきました。
赤ハイを頼みます。
私の好きな、いわゆる下町ハイボール。
先ほどの住吉「山城屋酒場」と異なり、焼酎が濃いのかガツンと来るハード系。
ご常連と親しく会話していますが、私を置いてきぼりにすることもなく、かといっておせっかいにならない距離で気配りしてくれるマスターに、私の緊張感も溶けていきます。
新規開拓がうまくいった時の心地よさ。
とりあえず、今日二杯目となる煮込みを頼みます。
素朴な味噌味にホッとします。
もつ焼きも頼みます。
カシラ塩で。
ネタは小ぶりながらも旨い。
一見の私にも、人懐っこく接してくれるマスター。
きっと、彼の魅力に惹かれて人が集まってくるのでしょう。
狭い厨房に掛かった「愛」という大きな額に、彼の想いが籠っているのです。
私より少し先輩とお見受けしましたが、人生の奥深さで言えば、大先輩でしょう。
そして、やっぱり厨房は、古いながらもきれいに磨かれていました。ここに来てみたかった最大の理由は玉子やき。
マスターがボールで卵を溶き、それを焼き始めます。
他の注文が入ると
「ごめんね、今玉子焼いてるから」
と後回しにするほど、全身全霊を傾けて焼いてくれています。
私もその姿から目が離せません。
しばらくして焼き上がった玉子焼き。
焦げ目が良い感じです。
鼻をくすぐる美味しそうな匂い。
「なつかし玉子やき」と書かれているメニューをあらためて見ると、なんと300円とあります。
コスパとかそういう次元を超越した、素晴らしい料理です。
あえての固焼きが、いかにも昭和。
マスターのこだわりが凝縮された一品です。
甘い玉子焼きですが、醤油も入っているのか、油多めなのか、焦げもいい感じ。
これだけ食べに来たいくらい旨い。
小一時間の滞在でしたが、初めて来たとは思えない不思議な居心地の良さを感じました。
たぶん私が若い頃からあったお店かもしれません。お会計は1,370円のセンベロ。
お店を出ると、そこはもう駅です。
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