味わいのある造りの老舗おでん屋桃若。
カウンターの中には白髪のちゃきちゃきした女将、寡黙な印象の初老の男性、そして30代と思しき明るい男性の三人。
顔がどことなく似ているので、母、息子、孫、と推察しました。
メニューを眺めながら決めかねていると
「ロールきゃべつ美味しいですよ」
と孫氏。
「じゃあ、それを。後、大根とたまごをください」
毎度おなじみの定番オーダーです。
薄口の出汁が、関西出身の私には好ましい味。
辛子と柚子胡椒を持ってきてくれました。
やっぱりここでも柚子胡椒です。
私が一生懸命写真を撮っていると、白髪の女将が寄ってきました。
「お客さんは食べ歩きの人?どこから来たの?」
「大阪からです」
私が長崎で出会った飲食店で働く女性は皆優しい話し方とおっとりした仕草でしたが、この女将は言葉こそ長崎弁ですが、どこか江戸っ子のちゃきちゃきした感じがします。
芋の水割りを貰いました。
おでんはマイペースで好きな分量だけ食べられるので、二軒目としては良いチョイスだったな、と自画自賛。
実にいい色の玉子。
味の滲み具合もバッチリです。
もうちょっとイケるよな、と思いながらメニューを眺めます。
「おすすめは何ですか?」
と孫氏に尋ねます。
「全部です!(笑)とうふはオススメですよ」
メニューの中にはちょっと実態がわからないタネが入っています。
「特製かまぼことわしかんってどんなのですか?」
「特製かまぼこはエソ、エビ、イカで作った自家製のかまぼこです。わしかんはイワシのかまぼこのことなんです。こっちではかまぼこをかんぼこと言うんですよ」
なるほど、 いわしのかんぼこだからわしかん、というわけだ。
自家製が美味しそうだなと思い、特製かまぼこととうふを注文しました。
出てきた特製かまぼこを見てびっくり。
でもすぐ納得がいきました。
ここは九州。
かまぼこと言えばさつま揚げのことだったのです。
茶目っ気な孫氏は私を見てニヤニヤしています。
エソ、エビ、イカで作った自家製の特製かまぼこ。
確かに旨い。
すごく気になっていた料理を〆に頼みました。
他のお客さんが頼んでいたしるかけ。
メニューに無いので、どんなものかと思ってカウンターを見ていると、お茶碗にご飯をよそい、そこにおでんの汁をかけているのです。
お客さんのご要望によりおでんの玉子のせ。
ネギをのせるかどうかを女将さんが聞いていました。
私も是非ともこれを、と女将さんを呼び止めてしるかけを注文しました。
もちろん玉子のせのネギかけです。
きっと他のタネでものせてくれるでしょう。
お茶漬けと同じ理屈。
酒の締めに美味しくないわけがありません。
玉子をひっくり返してみました。
茶色の白身は、まごうことなきおでんの玉子。
こんな美味しい締めのご飯は初めてです。
あっさり完食です。
お会計の時、素敵な女将に声をかけられました。
「この店を教えてくれた人に、お礼を言ってね」
私よりもずっと年上ですが、とてもチャーミングな方でした。
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