ですが、せっかくの東京ですから少し楽しんで帰りたいのがサラリーマンの人情です。
かつては頻繁に通った神田駅も、昨日からの上野東京ラインの開通によりすっかり様変わりしました。
山手線と京浜東北線の高架線路の上に更に高架線路を作るという驚くべき日本の鉄道技術。
私が転勤前からずっと駅の工事をしていたのはこのためだったのです。
それでも駅を一歩出れば、そこは懐かしい風景。
吉田類がふらりと現れそうな、都会の中の下町。
今日のお目当ては神田駅南口から少し南東の路地に入った焼鳥の名店吾妻家。
予約の取れない人気店ですので、今日のように仕事が早く終わった時だけがチャンス。
とはいえ、それでも振られる時もあるのですが。
駅から電話を入れました。
「まだ空いてますよ」
というご主人の声。
心なしか早足で店まで歩き、暖簾をくぐりました。
無事、カウンター席に居場所を見つけ、今宵のお楽しみの始まりです。
ビールは当然瓶。
キャベツの浅漬が突き出しで。
焼き物のメニューは壁に。
ハーフでお願いしました。
目の前のネタケースには、お客さんの注文に応じて冷蔵庫からその分量が補給される仕組み。
焼き方のご主人の奥さんと思しき方が補給係。
炭火と真剣勝負。
にこやかにお客さんと接し、次から次へとかかってくる混み具合を確認する電話にも嫌な顔ひとつせず応対しながら、見事に焼き加減をコントロールしています。
職人芸と思わせないところが職人芸。
一串目が焼き上がりました。
ささみ。
レアな素焼きに山葵です。
鼻にツンとくる感じが堪りません。
レバーはタレで。
たまひもが付いています。
もちろん絶妙の焼き加減。
たまごが補給されました。
私の分も含まれているようです。
楽しみ。
更に次のネタも補給されてきました。
今日はいい場所に座れて退屈しません。
割り箸に刺さったキュウリが出てきました。
すなぎもです。
お待ちかねのたまごも。
うずらが3個ときんかんが1個。
芋焼酎のロックに。
銘柄ではなく、芋か麦かというところがまた好ましい昭和居酒屋です。
ねぎまき。
太い白葱に鶏肉を巻きつけたオリジナル。
ここで大根おろしが出てきました。
うずらの卵が割り入れてあります。
粗く溶いて醤油を垂らして、口直し。
熱燗を頼みました。
年始の北海道旅行以来の日本酒マイブーム。
もちろん銘柄を聞かれることもありません。
それでいいんです。
正一合がナミナミと。
しっかりと受け皿に零してくれます。
これでまた焼鳥も一段と旨くなります。
つくねが出てきました。
この店ではだんご。
七味を振って。
零れた日本酒をぐい呑に移します。
酒飲みには堪らない瞬間。
ハーフの〆はかわ。
もも肉の旨味すら感じる一品。
ここで鶏スープ。
中締めです。
胡椒をたっぷり振るのがこの店の流儀。
予約してある新幹線にはまだまだ余裕があります。
もう一品食べたいな、と思いしいたけを頼みました。
塩か醤油かを聞かれましたので
「少しだけお醤油を垂らしてください」
とお願いしました。
「〆にもう一杯いかがですか?」
と鶏スープを勧められました。
「はい、お願いします」
と私。
私と同じタイミングで入った他のお客さんもそろそろ締めモード。
カウンターの中では美味しそうなそぼろ丼やそぼろ茶漬けが作られています。
次回はそれも食べないと、と思いながらスープを啜ります。
お会計を済ませ、心からの温かい見送りを受けて表に出ました。
外はすっかり春。
コートも、もう要りません。
目の前の巨大な高層の神田駅だけが、私の中では不思議な世界に見えました。
東京駅から新幹線。
いったい何度乗ったことでしょう。
車内での二次会用に欠かせないアイテムを購入します。
味付き茹で卵。
スーパードライが見当たらず、店員さんに聞いたら
「そのピンク色のがスーパードライです」
と言われてやっと気が付きました。
桜をあしらった春バージョンでした。
さっそく車内でひとり宴会。
二杯目はもちろん角ハイボール。
氷のサービスもあるので、二杯目以降は車内販売で買うのです。
今回のダイヤ改正でようやく電子マネーが使えるようになり、便利になりました。
スイカを使って払ったら、こんなグッズをくれました。
南森町に帰ったら、もう0時前。
それでも、もうちょっと飲みたくて止まり木のドアを開けました。
バーホワイトラベル。
久しぶりにお会いする常連さんに、遅掛けの常連さんも加わって楽しい会話が弾み、気がつけば2時を回っていました。
まだ火曜日なのに、家に帰ってから明け方まで寝落ちしてしまいました。
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