案内役のT女史と別れ、私はK局長をマイブームの場所にお連れするためにタクシーを拾いました。
「地獄めぐりをしましょうよ」
と言っても、別府温泉ではありません。
野田阪神の地獄谷。
巨大な交差点から新橋筋商店街へと入っていきます。
このレトロな商店街が新橋筋商店街。
初めての人をお連れするにはこの狭い道から入っていくのが面白いのです。
「え、こんなところから!?」
と皆一様に驚きます。
この狭い路地を奥へと分け入ります。
「ここですかぁ~。これはええわぁ」
とK局長。
まさにこの世からあの世へと、地獄へ落ちていく感じ。
目指すお店の灯りが見えて来ました。
私の大好きな立石の呑んべ横丁に似ています。
酒縁 ゆるり。
貸切用の二階を除けば、たった5人しか入れない小さな店ですが、旨い酒とアテを求めて地獄を彷徨う世迷い人が今日も集う店。
そんな成仏できない世迷い人を、優しく受け入れるマスターの人柄がこの店の最大の魅力。
先客は二名。
私たちは無事入ることができました。
私は金宮を能勢炭酸で割ります。
東京時代の下町居酒屋に通じる飲み方。
江戸への郷愁と、浪速への愛着がないまぜになった気分なのです。
今日ニ度目の乾杯。
鹿児島の一寸豆を網焼きで。
鞘ごと出て来ます。
アツアツをフーフー言いながら。
飲食の話では、いつの間にかマスターを交えて会話が広がります。
たまたま居合わせた常連さんともすぐ打ち解ける不思議な空間です。
今日のお客さんには以前会ったことのある20代の可愛らしいお嬢さんもいました。
この年でここの常連とは、若いうちから地獄に慣れてしまったようです。
そんな彼女が、この前トイレを借りに行った向かいのバーが気になります。
なんでもナポリタンが旨いとかいう情報も、その時ゲットしました。
次のお客さんが現れた所で、私たちの席を譲って、向かいの店へ。
その店は、カフェバー茶居珈(ちゃいか)。
私の母親に近い年齢のママがやっているスナックもあるくらいのこの地獄谷では、情報が無いと新規のお店のドアは開けにくいものです。
しかし、蛇の道は蛇とは良く言ったもの。
地獄谷を彷徨う人は、それぞれに自分に相応しい店を見つけるようです。
ドアを開けると、そこは落ち着いたバー。
地獄谷の他の店の雰囲気とはかなり異なります。
ドリンクメニュー。
こちらはフードメニュー。
なぜバーとは名乗らず、カフェバーなのかはわかりませんが、木の扉の向こうがどうなっているのかがわかっただけで私としては大きな収穫。
これで地獄谷のレパートリーが、また一軒増えました。
カウンターの向こうには自称「魔女」のCHIYOママ。
その魔女を交えてハイボールで乾杯します。
地獄には閻魔様というのが私のイメージですが、地獄谷には魔女もいるようです。
少し落ち着いた雰囲気で仕事の話。
K局長も悩みが多いようです。
魔女にお願いしたナポリタン。
パルメザンチーズをたっぷりかけて。
クルクルとパスタを巻いて、リフティング。
食品サンプルのイメージショット。
この店は実に落ち着きます。
地獄谷の常連さんたちによれば、10人入れるのはこの店と串カツ五右衛門くらいで、後はほとんど5、6人しか入れないとか。
ナポリタンでお腹いっぱい。
すっかり仕上げと締めを完了し、地獄からこの世への帰還を図ることにします。
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茶居珈 (バー / 野田駅(阪神)、野田阪神駅、玉川駅)
夜総合点★★★☆☆ 3.2
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