今日は残業になりました。
リセットを兼ねて、ちょっと一杯飲んで帰りたい気分です。
地元に戻るまで我慢できないし、今から下町に出かけるには遅い時間。
「どこがいいかな」
と思いながら虎ノ門駅に向かって歩いていると、目の前にその店が現れました。
間違いない大衆酒場虎ノ門 升本。
暖簾を潜って、一階席の厨房脇の席へ。
一人で来ると、たいていこの席です。
まずはホッピー。
グイっと飲んで、ようやく人心地つきました。
つまみはぶり刺身から。
この店はなんでも旨いのですが、とりわけ魚が旨いのです。
続けて玉子焼きも頼みますが、残念ながら売り切れ。
「升本」の焼き印が押された人気のつまみだけに、早い時間で無くなるのです。
残業が恨めしい。
「仕方ないな。別のつまみにしよう」
とメニューを眺めているうちに、急にあることに気が付きました。
「しまった!お金下ろしてくるの忘れた!」
財布には2,000円ちょっとしか入っていません。
どこで飲もうか考えているうちに、コンビニでお金を下ろすことを忘れていたのです。
「すいません、ちょっとコンビニでお金下ろしてくるので」
とホール係の女性店員に告げながら、椅子の上に置いた鞄を指さします。
無銭飲食でとんずらしませんよ、という人質の証のつもりですが、店員さんは
「貴重品が無ければ、置いておいて大丈夫ですよ」
と噛み合わない会話。
私が間抜けなのが悪いのですが。
慌てて隣のファミマでお金を下ろし、
「ほら、戻ってきましたよ!食い逃げじゃないですからね!」
という体で、妙に堂々と振舞いながら席に戻ります。
でも、女性店員さんはそんな私を見ていませんでした。
「懐が暖かくなる」
とはよく言ったもの。
なんだかスーツの内ポケットから温もりを感じます。
景気が良くなったので、炙り白子ポン酢を注文。
ホッピーにはプリン体が無いので、足りないプリン体を白子から摂取します。
ホッピーはナカをお代わり。
もう一品頼みたいと思い、もう一度メニューを眺めます。
「そう言えばここで焼魚を食べたことがなかったな」
と気が付きました。
鯖塩焼きを注文し、アルコールはホッピーから日本酒に切り替えます。
メニューに「立春の日特別限定朝搾り酒」というのを見つけました。
「今年一年の幸福と繁栄を招く縁起酒」とありますから、頼まないわけにはいきません。
地元千葉県の酒々井町「甲子 (きのえね)」にします。
特別限定のラベルも縁起もの。
店員さんが見事に溢して淹れてくれた純米吟醸無濾過生原酒に口を近づけて、グイっと吸い込みます。
この最初のひと口が、酒飲みには堪らない幸せ。
春を迎えるめでたき立春の日にふさわしい祝い酒が〈立春朝搾り〉。
節分の夜から一晩中もろみを搾り続け、立春の早朝に搾りあがったばかりの生原酒です。
フルーティーな高い香りとフレッシュで躍動感あふれる立春朝搾りを味わっているうちに、鯖塩焼きが出てきました。
大きな鯖が半身。
ひっくり返して箸を入れれば、グリルに落ち切らなかった脂が滴ります。
口に運べば、この上なく脂がのって実に美味。
甲子も進もうというものです。
きっかり一時間一人酒を楽しみ、虎ノ門の駅に向かいます。
お会計は3,190円。
コンビニにお金を下ろしに行っていなければ、微妙に足りない金額でした。
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