十年来会社を休むほどの風邪を引いたことがない私にとっては珍しいこと。
こんな時は栄養と休息。
五十肩治療の病院帰りに自転車で神山交差点へ。
割烹柿右衛門。
関西地焼にごだわる老舗で、淀川の天然鰻を出すことで最近新聞にも取り上げられた名店です。
昭和レトロな店内は、師走の喧騒が嘘のような静かな時が流れています。
塗のカウンターがなんともいえない風情。
とまたもや「孤独のグルメ」の井ノ頭五郎のようにつぶやいてしまいました。
相当悩んだ挙句、うな重2,000円を注文。
ふと目をやれば、そこには西川ヘレンの色紙。
浪速っぽいなぁ。
突き出しが出てきました。
なんと温泉卵。
卵好きの私には嬉しい誤算。
美しい色。
待つこと12分。
うな重が出てきました。
お重の蓋を開けるときの何とも言えない期待と興奮はうな重ならでは。
美しい照り。
もちろん普段の鰻は淀川産の天然鰻ではありません。
今日は鹿児島産だそうです。
私の目線はまたしても角に鎮座する出汁巻き玉子へ。
肝吸い。
お新香。
山椒を振って、いただきます。
関西地焼の店は、大阪でもめっきり減りました。
板さんにお話を伺いました。
「最近、みんな忙しいでしょう?お客さんが時間を気にしはるから関東風に蒸したやつを焼いたほうが早く出せるんですわ。そやけどほんまは注文受けてから蒸すんが流儀で、それをせんと蒸したんを冷蔵庫に入れといて、それにタレつけて焼く店が多いからベチャベチャした鰻になるんですわ。あれはあきまへん」
「うちはさばいた鰻をそのまま焼いて、途中で水かけて軽く蒸したみたいにして、それからタレ付けて仕上げますねん。鰻は一匹一匹違うから、人間が面倒見なあきません。スーパーの鰻が美味しゅうないんは、機械が焼いてるからですよ」
久しぶりにふんわりカリッとした美味しい鰻を食べました。
私が子供の頃はみんなこんな味だったような気がします。
閉店間際の14時に品の良いご婦人がお一人で現れました。
「ああ、やっと見つかった。えらい探しましてん」
新聞記事を片手に尼崎から訪れたご年配のご婦人は、どうしてもここの鰻が食べたくてやってきたのだとか。
それだけの元気があればきっと長生きすることでしょう。
食後のデザートの柿を食べながら
「そういえばここは柿右衛門だったな」
とまた独り言。
関西地焼の講釈まで聞いて、お代の2,000円は安かったなと外に出ると、そこは車が行き交う師走の大阪でした。
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柿右衛門 (うなぎ / 扇町駅、中崎町駅、天満駅)
昼総合点★★★☆☆ 3.5
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