新型コロナの影響で、家族揃っての外食もすっかりご無沙汰です。
少し感染が落ち着いてきたこともあり、9月が誕生日の次男と10月が誕生日の妻の合同誕生日会を地元のレストランで催すことにしました。
家族揃っての夜の外食は「コロナ禍」以降初めてです。
選んだのは、地元の人気創作イタリアン「プレゼンテ・スギ」。
このエリアでは評判のイタリアン「カステッロ」で働いていたシェフが独立して開いたお店です。妻は何度かランチで訪れていますが、私は4年前に一度ランチに来ただけ。
その時も予約が取り辛い店でしたが、最近は一段と予約困難になっているようです。
この日は土曜日ということもあって、やっと繋がった電話で取れたのは、ひと月半先の今日でした。
ディナーは18時からの一回転。
隠れ家風の一軒家の前の駐車場に車を止めて開店を待ちます。
18時になると、ドアが開けられ、奥さんに店内に招じ入れられます。
予約は三組だけ。
テーブルの間隔も開け、感染対策も行き届いています。
料理の前に、オーナーシェフがテーブルを回って、今日の食材の説明をしてくれます。
テーブルセッティングも美しく、期待が高まります。
以前もそうでしたが、器やカトラリーにもかなり力を入れていて、料理が一段と引き立つプレゼンテーションです。
ドリンクメニュー。
今日はグラスワインを色々飲んでみるつもり。
息子たちは限定のラグジュアリービールにすると言います。
お料理のメニューは、何が出てくるのかわからない謎々のよう。
料理の前に、オーナーシェフがテーブルを回って、今日の食材の説明をしてくれます。
「千産千消」(千葉の食材を千葉で使うという意味の「地産地消」)に拘るシェフの思いが伝わってきます。
「今日は食材に良いものがいろいろ手に入ったので、メニューには無いものもいくつかお出しさせてください」
というシェフの嬉しいお話です。
私はスパークリングワインからスタート。
家族5人、外食で乾杯するのは1月の私の誕生日会以来でしょう。
ハンドルキーパーを務めてくれる主賓の妻と次男が、ノンアルコールのジンジャーエール。
ラグジュアリービールを私も一口もらいました。
「お店を選ぶ醸造元なので、去年は審査に落ちてしまい、受験に失敗したみたいでした」
と笑うオーナー。
スタートはりんご飴風のトマト飴。
オーナーシェフの杉岡さんご夫妻のメッセージカードが添えられています。
「お客様に素敵な時間が訪れますように。。。」
という言葉とともに、エンタテインメントの始まりです。
「千葉の食材に拘っているのですが」
と言いながら、
「今日は神奈川の良いトリュフが手に入ったので、これを使っていきたいと思います」
マネキンの手の形のようなリアルな置物に器が載せられて運ばれてきました。
ドキッとするプレゼンテーション。
利根川で獲れたモクズガニ(上海ガニの同属異種)とむかご。
その上にはトリュフ。
味付は、やはり利根川の川魚から作った魚醤を使って。
私は、白のグラスワインからスタート。
シャルドネとソービニヨン・ブランのブレンドは軽やかな辛口。冷凍保存しておいたという夏みかんを使って、爽やかな風味。
「キクラゲは佐倉で自分で採りました」
「キクラゲは佐倉で自分で採りました」
というシェフ。
ジビエ好きの私には嬉しい料理です。
「これが、そのキクラゲです。触ってみてください」
と持ってきてくれたのは、普段私たちが見かけるものよりも遥かに大きく、力強いもの。
「天然のキクラゲは、栽培ものと違って生命力があるんです」
鳥の手羽先のフライが出てきます。
と思ったら、これにもギミックがありました。
利根川産のスッポンと鶏のミンチのフライ。
二種類の肉を手羽に詰めて形を整えて揚げたもの。
皮は、唐辛子を使ったピリ辛の味付。
皮は、唐辛子を使ったピリ辛の味付。
一見すると鳥のから揚げのようですが、このサプライズもエンタテインメント。
鹿節を見せてくれました。
鹿肉で作った節。
千葉は鹿による農作物の被害が多く、害獣として駆除されるものの、その命を「食」という「再生」になかなか繋げられない難しさがありますが、こんな食材の利用方法があることを知り感心しました。
その鹿節を削ったものが添えられた次の料理は、カボチャ。
アルコールの進む料理に、白ワインもお代わり。
今度は少ししっかりしたものを頼みます。アメリカのシャルドネの樽熟成。
先程見せられた骨が生まれ変わったものが、次の料理なのです。
牛と猪とスッポンのコンソメスープがワイングラスに入って出てきました。
パンが欲しいな、と思っていたところに、焼き立てのクロワッサンがサーブされました。
牛と猪とスッポンのコンソメスープがワイングラスに入って出てきました。
「生地が発酵したところを、すぐ焼いたのでカリカリ、モチモチですよ」
と奥さん。
と奥さん。
佐倉の大麦が上にまぶしてあるそうです。
オーナーは自分でも菜園で野菜を栽培しているのです。
GV鯖と名付けられた、この店の名物料理は、ガストロバック(GV)を用いたもの。
料理の創造性を高める減圧加熱調理器「ガストロバック」を使った料理は、オーナーお気に入りの調理法のようです。素材の持ち味を引き出しつつ、鮮度や色を保つ科学調理器具。
店名の「プレゼンテ・スギ」らしく、「今」「現代」に拘ることにより、料理の未来と自分の進化を重ね合わせているのでしょう。
次なる料理は、鰤大根。
「生のブリなのにブリ大根?」
と思わず驚く料理。
これも、オーナー得意のガストロバックを使った調理法。
ブリのアラから取った煮汁を大根に、一方で大根の煮汁をブリに注入したもの。
別々に調理したのに、結果的に鰤大根の味になっている、というアイデアです。
大根は凸凹で見た目が良くなくても味の良いものを、粗末にはしたく無かったので丸くくりぬいて綺麗な形に整えたそうです。
大根は凸凹で見た目が良くなくても味の良いものを、粗末にはしたく無かったので丸くくりぬいて綺麗な形に整えたそうです。
店主の食材に対する敬愛の情の現れ。
鰤の皮は、カリッと炙ってあるのですが、焦げてはいません。
これも創作調理法のようです。
次は千葉の食材ですが、メニューにはない今日のスペシャル。
利根川産のアメリカ鯰です。
蓬のクレープの上に、佐倉のラッキョウをタマネギ代わりに使ったタルタルと、露地もののキュウリが添えられています。
鰻に似ていますが、もっと淡泊で臭みもありません。
鰻に似ていますが、もっと淡泊で臭みもありません。
私はナマズは二度目ですが、おいしく頂きました。
またしても食材のプレゼン。
秋の味覚、松茸です。
といっても、これは松林ではなく雑木林に生えるので、通称「バカマツカケ」と呼ばれる別種。
といっても、これは松林ではなく雑木林に生えるので、通称「バカマツカケ」と呼ばれる別種。
なんでも、いすみ市のとある崖で採れるものだそうですが、その場所はオーナーも教えてもらえないそうです。
これを使って、次の料理が用意されます。
これを使って、次の料理が用意されます。
お口直しのアイスキャンディーはレモンと檜の風味。
越前龍泉のナイフとフォークが用意されます。
いよいよメインのHigh & Lowステーキです。
その前に「本日の焼き立てパン」。
全員同じでないといけないので、牛を頼んでおきました。
あらかじめ仕入れた食材を、前日から仕込み始めているそうで、予約の変更は5日前までにと言われた理由がわかりました。
当日は三時間前から調理が始まります。
当日は三時間前から調理が始まります。
「一旦冷却し肉汁を暴れないように押さえ込むんです」
というシェフの工夫なのか、確かにお皿には全く肉汁がありません。
好みでお塩を。
ナイフで切っても、全く肉汁は出てきません。
口に含めば、旨味は見事に封じ込められていました。
ステーキ自体は小さいカットですが、ここまで相当な量を頂いているので、これでも十分堪能できます。
コースの展開も、全くシェフの創作なので、想像がつきません。
アルコールのお代わりは、悩んだ末にビールにしました。
地元佐倉の地ビールです。
杉寿司。
ガラスのお皿はスガハラのもの。新米をドレッシングで軽く洗うような味付にして、イタリア風の酢飯ということでしょうか。
お腹はすっかり一杯なので、料理はそろそろ終盤なのでしょうか。
次の展開が想像できません。
ここで出てきたのは、サラダ。
「Sugi畑をお皿に乗せて」というタイトルです。
ご自身の畑で採れた野菜や花を、その素材の色や形を生かしながらのオリジナルサラダ。
ドレッシングはレモンとオリーブオイルを凍らせたもの。
溶けるに従い、パチパチ音がするのは、二酸化炭素が弾ける音です。
ブラックオキザリスの葉が添えられています。
上にのったウニのアイスが溶けてきます。
どこまでもサプライズ。
ようやくデザートまでたどり着きました。
真っ白な3Dプリンタのお皿にのって出てきたのは、真っ白いアイス。
「本日のエアーアイス」は日本のポルチーニといわれるヤマドリダケを使ったエもの。
今日は秋ということもあって、キノコが多用されています。
やはり千葉の八千代牛乳のヨーグルトをかけて。
ペンタスの花の星形が可愛い。
エアーアイスというだけあって、フワッとした食感です。
キノコ風味のアイスは、初めて食べました。
更にデザートが続きます。
柿のカキ氷。「旬の果物の柿の味をそのまま表現したかったので、何も味を加えていないんです」
ほうじ茶の冷凍シロップが、風味あるアクセント。
食後のドリンクはエスプレッソにしました。
そこに出てきたのは、何やらイースター島のモアイ像を模した形のもの。
「食べられなそうで食べられる」
とメニューにあるフィナンシェです。
見た目は確かにモアイ像の石のようですが、柔らかくて甘く、食感はまさにフィナンシェのそれ。
フィナーレは木の小箱に入った飴。
これは「食べられないけど食べられそう」とメニューにある、石鹸のお土産です。
「お家に帰っても、今日のスギのお料理をいつも思い出して欲しくて」
最後は私からのサプライズ。
バースデーケーキの代わりに、プレートに素敵な絵を描いてくれました。
時計を見ると、もう21時半を回っています。
お会計はディナーが一人10,000円(税別)ですが、ビーフは1,000円プラス。
それにドリンクを一人ワンオーダーすることが条件となっていますので、サラリーマン家族には贅沢な食事でしたが、皆喜んでくれたので良かったです。
2時間半以上に及ぶ杉岡さんご夫妻のパフォーマンスは幕を閉じ、奥さんが玄関でお見送り。
これにて一大エンタテインメントは終了かと思いきや、駐車場の出口にいつのまにか警備員のように光る安全反射ベストを着用したオーナーシェフが、車が出やすいように交通整理をしてくれています。
最後まで腰の低いおもてなし。
この店の食べログ4点越えのポイントは、料理だけではないことを改めて実感しました。