外せないのがここ、ステーキハウスチャイム。
初めて先輩に連れてきてもらったのは東京転勤直後の1987年。
今ではすっかり綺麗な外装のコンワビルですが昭和40年代の竣工。
この店がある地下は全く昔のままです。
略してコン地下。
私のB級ぶりをよく知る元部下の女性Nさんに「B級の中のA級をごちそうしてやるよ」と言って連れてきました。
「新橋のむさしやみたいな店じゃないでしょうね!?」
「大丈夫だよ、新橋のむさしやみたいにオープンエアじゃないし、ゆったり座って目の前で調理してくれるから」と説明。
この日は12時前ですんなり入店。
昔はいつもその時間でも行列でしたが時代の流れでしょうか。
リーマンショック以降の外食価格破壊の波に押されてか、豚や羊などの廉価版もメニューに登場しました。
しかし、そんな軟弱なものは昭和世代の私は頼むわけにはいきません。
ここでは牛。
ステーキと言えば牛。
私の世代では豊かさと贅沢の象徴なのです。
しかもWカット。
お値段は1300円。私のおぼろげな記憶では1,150円だったような。。。
しばらく来ない間に値上がりしましたがこれ以外の選択肢はありません。
更にガーリックライス、といきたいところですが、これは夜限定。
この日もダメ元でお願いしてみましたが、柔和なご主人にやんわりと断られてしまいました。
着席するとまずテーブルに基本セットが用意されます。
サラダ、コンソメスープ、ライス。
そこへご主人が登場。
今時のステーキハウスがどうなっているのか知りませんが、ここは極めて庶民的な店。
お手頃価格で食欲旺盛なサラリーマンの胃袋を満たしてきた歴史があります。
年季の入った赤いビニールレザーの椅子、レンガ造りのコンロ台、そして磨きのかかった鉄板。
すべてご主人の人柄が伺える手入れの行き届いたものです。
まずはWカットの肉とニンニクが投入されます。
軽快なコテさばきとフットワークでリズミカルに肉を焼き、そしてカットしていきます。
高いところからパラパラと塩コショウを振って味を調えます。
見事な流れ。
ほどよくミディアムレアな感じになったところで、もやしを投入。
今度はもやし炒めに取りかかります。
昔は昼ビールを飲みながらこのパフォーマンスを楽しんだのですが、往時の賑わいもなく随分と寂しい店内。
当時は二人のシェフがコテを持ちながら前後左右といくつもの鉄板の間を華麗に舞っていたのです。
時代の流れを感じながら、全く昔と同じWカットを辛子酢醤油でしみじみと味わいました。