何度か店の前を通ったことがあるのですが、謎の外観が気になっていました。
間口が広い割に奥行きがなく、妙に明るいガラス張りの店内はいつも常連さんと思しきお客さんたちで賑わっています。
それなりの歴史がありそうですから、何か存続し続ける理由があるのでしょう。
店の名はこうせつ。
事前調査では、オーナーが南こうせつのファンらしいのです。
本当なら、相当ユニークです
暖簾にはこうせつ会の染め抜き。
マジでしょうか。
なんとも雑然とした大衆食堂の雰囲気。
ランチのメニュー看板にある、カレーそうめんというのが猛烈に気になりました。
店内を見渡しますが、特徴が無く組み立てに困るメニュー群。
しかも意外と高かったりします。
とりあえず生ビールを頼み、腰を落ち着けて様子を探ることにします。
突き出しが付いてきました。
常連さんは皆お一人。
男性3名、女性1名。
奥さんは陽気に大声で笑いながら、お客さんと絡んでいます。
このダミ声は、昔吉本の漫才師にいたような気がしますが思い出せません。
とにかく猛烈なマシンガントークで、いかにも大阪のオカンという感じ。
お客と喋るというよりは、自分が喋ってお客が聞いているという感じで、一人でボケとツッコミをやっています。
年は私より5つ6つ上でしょうか。
どう見ては私は明らかに一見。
常連さんたちの熱い視線を感じる、完全にアウェイ感満載の状況。
とはいえ、大阪の居酒屋に行くと必ず経験するこの感覚にもすっかり慣れました。
陽気なオカンは
「メニューありますよ!大したもんはないけど。ギャハハハハ~」
とホワイトボードを渡してくれました。
このオカンは必ず語尾に爆笑がつくのが口癖だと、入店して30秒でわかりました。
「美味しいメニュー」とは何とも大胆です。
そして私の想定よりも200円ずつ高い印象です。
「うん、それがええわ!色々入ってるしな。ギャハハハハ~」
「納豆にそれを入れて、辛子と醤油を入れてかき混ぜてぇ。混ぜたら海苔をかけますから」
最初から混ぜて海苔も載せて出せばいいのにな、と思いましたが、これも演出の一つなのでしょうか。
残念ながらそこにサプライズは無し。
常連さんたちとオカンのトークは留まるところを知りません。
全員お互いを名前で呼び合う仲。
しかも、オカンは常連さんたちからビールやお酒を貰って、ますますボルテージが上がっています。
「これ、お隣のお客さんから」
と渡されたのは茹で蟹。
「どうもありがとうございます」
とお礼を告げたところから、ようやく私も会話に入れるようになってきました。
「芋のロックを貰えますか?それとお水も」
「は~い!芋のロックね。それとチェーサーやな。ギャハハハハ~」
そこが笑うところかどうかは不明でしたが、とにかくオカンは楽しそうです。
それにつられて私も何となく楽しくなってきました。
厨房の奥からオヤジさんも時々顔を出して、会話に絡んできます。
料理を作りながら、会話は全部聞いているのです。
「焼き魚は何がありますか?」
とご主人に聞きました。
「ブリと鯖ですかね」
「さんまはないの?さんまは」
とオカンは何故か猛烈にさんまを推してきます。
「今日はさんまは無いねん」
とご主人。
そりゃそうでしょう、あったら解凍モノだもの。
「お勧めは何ですか?」
と聞いた途端、二人共絶句してしまいました。
お勧めはないんだ。。。
そのやりとりを見ていた私のほうが吹き出しそう。
「ブリにしましょ。照り焼きで」
と言うご主人の勧めに従うことにしました。
ブリ照りを摘みに芋ロックをもう一杯。
「うちはね、もう35年になるんですよ。日曜日はランチだけやってますねん。日曜日のランチは珍しいでっしゃろ。ギャハハハハ~」
そこは笑ってもいいのか。
私に蟹をおすそ分けしてくれた常連さんが帰るのを潮時に、私もお会計。
「こんな店ですけど、良かったらまた来てください!どうもおおきに~」
「そこは笑わないところなんだ」
と思いながら、何ともユニークな店を出た後で、こうせつの謂れを聞くのを忘れたことを思い出しました。
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こうせつ (定食・食堂 / 大阪天満宮駅、南森町駅、扇町駅)
夜総合点★★★☆☆ 3.0