今日は支社でもB級グルメに造詣の深い同期のT局長肝煎りの企画。
メンバーは私の同僚M部長と、その同期のM君、そして私の部の若手W君という、オジサン4人、若者1人で
ディープ西成のど真ん中にある
なべやで安くて旨い鍋をつつこうという趣向です。
西梅田から
四つ橋線で
花園町まで。
ここから歩いて7,8分でお店です。
なべやへのアプローチとしては最も安全なコース。
その名もズバリの店名。
私は三度目の訪問です。
さして広くない店内は鍋の熱気でムンムンしています。
私の眼鏡はたちどころに曇って前が見えません。
厨房前のテーブル席が我々の予約席。
予約するような店では本来ないのですが、今日もよく流行っています。
こんな場所に地元らしからぬ女性だけ、というお客さんも二組いてびっくり。
そういえば私の大好きな
京成立石の
もつ焼き宇ち多”にも若い女性客を見かけるようになりましたから、オヤジの店でも美味しいと聞けば臆せずに来るのでしょうか。
まずは
瓶ビールで乾杯!
鍋の前に少しつまみます。
名物
鮪すきみ。
これで
230円!
ふぐ皮湯引きは
300円。
一番高い
鯨ベーコンでも
500円。
鍋の展開をTさんと相談。
小鍋で一人鍋というのが当店の基本ですが今日は5人なので、大鍋でいった後、種類を変えて小鍋でいくことにしました。
鶏水炊きを二人前。
お皿からこぼれそうなぐらいの山盛りです。
鶏ミンチ鍋一人前も加えて、同じ水炊き鍋で攻めることに。
そういえば
ミンチって
大阪特有の言い方なんですよね。
鶏ミンチ鍋の野菜は別盛で。
薬味のポン酢も出てきました。
まずは
鶏水炊き。
そして
鶏ミンチ、と交互に楽しみます。
Tさん自ら
ミンチを小分けして入れる見事な奉行ぶり。
身体の芯から温まって実に旨い。
暑くなってきたので、冷たい
レモンハイ。
次なる展開は、味を変えて
かき鍋を
味噌で。
これが一人前の小鍋で
900円。
お店の人が上手にならしてくれます。
ここはホール係のお姉さんたちがとても気さくで親切。
それも土地柄だからでしょう。
こんな感じにして、しばし待ちます。
私は
ライムハイにチェンジ。
会話も弾んできました。
そろそろ食べごろです。
旨っ!
この店是非モノの鍋があります。
牛肉すき焼き650円。
大阪といえば
すき焼き。
これを食べないわけにはいきません。
プレゼンテーションが美しいこの店の鍋の中でも一際美しいのがこの
牛肉すき焼き。
私は
芋焼酎のロックにしました。
会社の話からグルメの話まで、話題は尽きません。
いい色になってきました。
すき焼きと言えば
卵。
これが食べたいから
すき焼きを頼むと言っても過言ではないほど、私は
すき焼きの
卵が大好き。
食べる前から幸せなビジュアルです。
牛肉と
糸こんにゃくを追加しました。
いかようにもトッピングできる
浪速の下町らしい合理的なシステムです。
糸こんにゃくは私の好きな鍋の具材。
家人は鍋に匂いが移るから嫌だといって食べさせてくれないのですが、単身赴任中は
糸こんにゃく食べ放題。
今日もさりげなく私に有利なオーダーをしちゃいました。
そろそろシメに行きましょう。
もちろん
雑炊です。
この為に残しておいた水炊きの出汁にご飯を投入してもらいます。
かなりお腹がいっぱいなので、小ライス。
出汁の量を加減して段取りをしてくれるのは、優しい下町のお姉さん。
ここはプロにお任せ。
かたや
すき焼きの残りの割下には
うどんで決まり。
うどんは二玉。
こちらもお姉さんにおまかせです。
味が滲みるまで少し放置。
雑炊が煮立ってきました。
葱、
卵、
味付海苔が用意されます。
味付海苔というのがこれまた
大阪らしい。
まず
溶き卵を回し入れます。
お姉さんが
味付海苔を袋ごと揉み始めました。
葱を入れます。
袋を開けて
味付海苔を振り掛けます。
なるほど手がベタつかず合理的。
出来ました!
鶏のもも肉とミンチの旨味がたっぷり滲みた絶品の
雑炊。
すき焼きの
うどんも食べ頃になったようです。
最初はそのままで、二回目は残っていた
溶き卵に入れていただきました。
しみじみと旨い。
お腹も膨らみ、アルコールも入ってしっかり温まりました。
二軒目は
新世界のバーへ。
その前に、Tさんと私以外の3人には初めてとなる
西成ディープゾーンの社会見学へお連れしましょう。
実は
なべやの場所は
あいりん地区の中心、
三角公園のすぐ南。
ドヤにも入れない路上生活者に占拠されて久しく、治安はこのあたりでも一番良くない所。
そのすぐ横で睨みを効かせる城塞のような
西成警察署。
かつての西成暴動を踏まえ、外部からの攻撃に備えた堅牢な建物は日本でも特異な警察署。
阪堺線今池駅に向かう商店街を抜けて。
スーパー玉出。
ここはドヤに住む人たちの生活物資の供給場所。
堺筋を東に渡ると複雑にアーケードが入り組んだ商店街へ入ります。
目につくのは商店ではなく
居酒屋という名のカラオケスナック。
ガラス張りの店内には若い女性のホステスさんが見えます。
ガラス張りなのは、入りやすさや安心感、風営法や治安の問題など様々な理由があるのでしょう。
判で捺したように
1曲100円と決して安くはない価格ですが、これもドヤで暮らす人たちのささやかな娯楽。
Tさんオススメの
すし寛。
こんな場所ですが、普通に美味しいそうです。
地下鉄で一本だし、一度来てみよう。
あびこ筋を北に渡るとそこからは
浪速区。
日本一高い
あべのハルカスが見えます。
この高低差ほどある
大阪の矛盾が、まさにここに。
すっかり綺麗に安全になった
ジャンジャン横町。
私が学生時代に労務者と肩を並べて飲んだ串かつ屋も、今は家族連れが訪れる観光スポットとなりました。
きらびやかなネオンに彩られた新進のオオバコ串かつ屋。
かつてあった怪しいスナックや飲食店、安い洋品店、ゲームセンターなどは無くなってしまいました。
もちろん路上生活者もバッタ売りも。
土日は観光客で賑わうピクチャースポットですが、平日の夜は閑散としています。
観光地化したおかげで、この街から本当の意味での賑わいや生活臭は消えてしまいました。
残念な限りです。
通天閣の一本南の
串かつストリート、有名な
串カツだるま発祥の地。
私はその隣の
やっこの方が好きです。
ここが
新世界の
串かつのルーツ。
数少ない残された
新世界らしい所をご案内。
大衆演劇の
朝日劇場。
旧作や成人映画などをかける
国際劇場。
この寒空に、入口脇には立ちん坊の女性。
でも、たぶん「彼女」ではなく「彼」でしょう。
あの頃の
新世界は、もうここだけになってしまいした。
再び
通天閣へ戻ります。
通天閣の北側のエリアは、
凱旋門の放射状の道を模したという、嘘のような本当の話。
北に真っ直ぐ伸びるメインストリート沿いにある昭和レトロなバーがTさんオススメの今宵の二軒目。
Suntory Bar BABY。
この前は何度も歩いたことがあるのに、不覚にも知りませんでした。
ドアを開けるとそこはタイムスリップゾーン。
壁には女性のヌードの壁画。
描かれた様子を写した写真もありました。
初代
通天閣の写真。
凱旋門と
エッフェル塔の二つの要素を合体して建てられたそのスタイルは、いかにも浪速っ子が好みそうな度肝を抜くスタイルです。
バーボンソーダを頼みました。
もちろん
JIM BEAM。
ゆったりとした時間を愉しみながら、チビリチビリ。
お手洗いに「寿屋の洋酒チェーンバー」についての口上がありました。
この方がマスター。
二代目だそうです。
71歳とは思えない若々しさですが、その目尻の皺にカウンターの中で重ねてきた年輪を感じます。
昭和30年(1955年)創業といいますから、もう59年。
その翌年にオープンした
十三トリスと同じ
寿屋(サントリー)のチェーンバー。
ハイカラながらもお高い洋酒の普及を狙って各地に出来た
サントリーバーは、高度経済成長期の昭和サラリーマンの心を掴んだのです。
マスターが手に持っているのは昔の
缶入りハイボール。
最近の商品だと思っていた私は驚きました。
こんなに古くからあったのです。
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撮影・掲載許可済み |
新世界の栄枯盛衰をカウンターの中から見てきたマスターを交えて同僚たちと深まる会話。
でも、私は目の前の
バーボンソーダを眺めながら、亡き父も昔飲んだのだろうか、と違うことを考えていました。
店を後にしてもう少し歩きます。
ビフカツサンドで有名な
グリル梵を路地裏に訪ねます。
もちろん営業は終わっている時間ですが。
恵美須町駅へ向かって歩きながら、振り返れば浪速のシンボルのネオンが鮮やかに浮かび上がって見えます。
大阪を再発見する小さな旅。
この町に暮らす間に、できるだけたくさんこの町の今と昔に触れたいと改めて思いました。
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