かつて虎ノ門にあった町中華が、40年の長きにわたる歴史を汐留で閉じようとしています。
上海餐室。
いつも茶化したコメントを書いてきましたが、大阪赴任前の2年間をかけて、季節限定を含めて30種類以上のメニュー全てをクリアしたほどの大ファン。
13時以前はメニューが限定されるため、あえて13時以降に訪問しました。
今日は、このランチを軸に仕事もスケジューリングした程です。
家族経営の町中華が、昔の大家の共同通信に乞われて汐留に移ってきて、かれこれ10年は経つでしょうか。
かつてチェーンの上海エキスプレスが入っていたオオバコに、高齢のお父さんが鍋を振る店が入ったことが不幸の始まりだったのです。
再開発の高層ビル群のレストラン街は、金太郎飴のようなお店ばかり。
そんな中に、庶民的な町中華がやってきて、たちまち人気となりました。
もちろん、もともとの贔屓であった共同通信の記者たちばかりでなく、近隣のビルのビジネスマンも訪れ、回しきれないお客と注文が殺到したのです。
13時半でしたので、行列こそ無かったものの、ほぼ満席。
しかも、まだ料理が出ていない人の方が多いようです。
ほぼ暗記しているメニューを改めて眺めますが、迷いに迷って決め切れません。
どれも思い出深く、この店での全クリの歴史が走馬灯のように脳裏に浮かびます。
結局、上海焼きそばと炒飯という二人前の発注。
晩ご飯を抜けば良いだろうという安易な考えです。
注文を取りに来た妹が
「上海焼きそばでいいの?炒飯なら焼きそばが肉だから高菜がいいかもね」
とアドバイスをくれました。
彼女は私がかつて全メニューをクリアするために毎回違う料理を頼んでいたことを覚えているのです。
今に出てくるか、とスマホをいじりながら待っていましたが、結局予想以上に待つことなんと1時間20分!
ガラス越しに見える厨房のお父さんの動きを見れば、宜なるかなですが、最後までカオス。
先に上海焼きそばが出てきました。
久しぶりに啜ります。
「あれ、こんなにベタっとしてたかな」
という印象。
麺が焦げているところは、カリッとしていて美味しい。
具材はかなりたっぷりで、豚肉も分厚いです。
最終日のサービスなのか、仕込みのミスなのかはわかりません。
焼きそばを食べ始めたところで、高菜炒飯が出てきました。
これもこの店のメニューでは好きだったもの。
玉子スープも付いてきます。
あの頃とは年齢も違います。
果たして食べ切れるでしょうか。
懐かしい高菜炒飯もややベタっとしています。
お父さんの鍋振りの動きを見れば、それもやむを得ないところ。
高齢化と後継者難による廃業は現代日本の抱える大きな問題です。
やけにしょっぱい玉子スープ。
お父さんは味覚も衰えているのかもしれません。
この店で最後のオン・ザ・ライス。
高菜炒飯に上海焼きそばという、フィナーレに相応しい豪華な組み合わせです。
この辺りでかなり苦しくなってきました。
既にこれで一人前以上食べているのです。
量だけでなく、油っこくて味も濃いめなので、かなり苦戦しましたが、なんとか完食しました。
今日の夜の部は貸し切りだそうです。
もちろん共同通信の方々でしょう。
お会計を済ませると、妹がにこやかに
「ありがとうございました。長い間お世話になりました!」
と声をかけてくれました。
私は思わず胸が熱くなりました。
さようなら、上海餐室。
ありがとう、お姉さんたち。
お疲れ様、お父さん。
そして、もう怒らないでね、お母さん。
上海餐室 (広東料理 / 汐留駅、新橋駅、築地市場駅)
昼総合点★★★☆☆ 3.5
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