驚きを隠せません。
あまりにも突然でした。
あの大行列の人気店 そば処 港屋が何の予告もなく昨日閉店したと聞き、今日のランチタイムに確かめに行ってみました。
店主の菊地さんのメッセージが書かれた一枚の貼紙が全て。
そのわずかな行間に、彼の溢れる思いが読み取れる切ない文章でした。
数年前にブログが縁でNHKBSに私が取材を受けた同じ番組で、彼も取材を受けていました。
元銀行マンだった彼は、脱サラして港屋を始めた理由をこう語っていました。
「ワイシャツを汗塗れにして仕事するサラリーマンが元気になるような、そんなことをしたいと思って始めたのです」
笑顔の素敵な若い方でしたが、保守的な蕎麦の世界に、大きな変革をもたらした、極めて「クリエイティブ」な方でした。
そんなこんなで、気分は肉そばです。
同じ虎ノ門にある、やはり人気の行列店 肉そば ごん。
この店を「港屋インスパイア系」とか「港屋リスペクト系」と評する人もいますが、雨後の筍のように現れた「なんちゃって港屋系」とは一線を画するオリジナリティがあると、私は思っています。
港屋ほどの低価格ではありませんし、サラリーマンランチとしては高い部類なのですが、そのクオリティはあります。
今日は11時半に訪問。食券購入待ちの列こそありましたが、スムーズに入店です。
今日はまだ食べたことのない相盛り。
「肉そば&シビレまぜそばハーフセット メンチカツ 付き」
という、1,800円の豪華ランチ。
リーマンランチ二食分の散財ですが、港屋追悼の特別なランチです。
「お蕎麦は大盛にできますが」
といつも通り聞かれます。
デフォルト大盛なので、大盛にすると大変な事になるのは何度も経験済み。
このセットはメニューにはどちらも「スモール」と書かれていますが、スモール度合いが何とも読みにくい。
一旦は断りますが、私の中で悪い虫が騒ぎ始めます。
「あ、あの、肉そばの方だけ大盛で。。。」
次第にお店は混んできて、たちまち満員です。
ミート矢澤が経営するこの店は、肉はもちろん美味しいですが、蕎麦や出汁、薬味にいたるまでしっかりと行き届いていますし、何よりお店の清潔な手入れが良い。
待っている間に、夜メニューなどを確認。
しばらくして出てきた 肉そば&シビレまぜそばハーフセット メンチカツ付きは期待以上のプレゼンス。
肉そばとシビレまぜそばのそれぞれに生卵という、たまご好きの私には玉乱状況です。
肉そばの大盛も、スモールサイズの大盛なので、通常店の普通盛り位。
これなら食べられそうな予感。
まずは肉そばを底に沈んでいるつゆを絡めるようにしっかりと混ぜ合わせ、粗めに溶いた生卵にデイップして、すき焼き風に啜ります。
紙エプロンがあったはずですが、今更遅いと、このまま慎重に食べ進みます。
ミート矢澤ならではの牛バラ肉はもちろんですが、山芋を練り込んだ腰の強い極太麺、節の利いた甘辛い濃い口のつゆがナイス。
京都亀岡産の九条葱や有明産の切海苔など、トータルバランスもハイレベル。
カウンターの上にある天かすもたっぷりインして、よく混ぜてから啜ります。
じんわりと追いかけてくる辣油と山椒の麻辣の辛さ。
黒毛和牛の肉汁溢れるメンチカツは、もちろん揚げ立てのアツアツ。
箸を入れると「ジュワ~」と肉汁が溢れてきます。
つなぎが少ないので、ミッシリ感がハンパありません。
箸が弾き返されるほどプリプリのです。
本わさびと共に酢醤油で食べれば、肉の味が引き立ちます。
シビレまぜそばは、デフォルトの1シビにしたので
「もう少しイケるな」
と卓上の辣油と黒七味も加えます。
そこに昆布酢を加えれば、辛さのパンチが増しながらも、まろやかな味に変化します。
最後はシビレまぜそばの残った具に追い飯を入れて混ぜ合わせ、丼をクリーンアップ。
肉そばを食べた生卵には、甘辛いつゆが良い塩梅で溶け込んでいるので、蕎麦湯で飲み干します。
もう啜ることの出来ない港屋の創作肉そばを思い出しながら、ここの美味しい創作蕎麦を啜り、「港屋」の、いい追悼ランチとなりました。
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