久しぶりに宴会の予定もなく、マイペースの休日。
とはいえ雑事に追われ、いつの間にか日は暮れてきました。
今日は、お気に入りの居酒屋、与力町の竹うちに転勤前のラスト訪問。
開店と同時の17時半に予約しておきましたが、ランチで食べたらーめん颯人のみそらーめんが未消化のまま、もうその時間。
お店のそばのコンビニで胃腸薬を買って飲み、その足で暖簾をくぐりました。
カウンターの一番右端、私が好きな場所に座り、まずは生ビール。
奥さんの入れるきめ細かい泡立ちの生ビールも、これが最後。
「連日お忙しいんじゃないですか?」
「ええ、昼も夜もなんです。ありがたい話ですが」
「胃腸を大事にしてくださいね」
忙しくホールを回りながら、いつもさりげなく話しかけてくれる奥さんの接客も、この店の魅力。
黒板を眺めます。
いつものように小鉢から。
小松菜煮。
なす穴子煮。
野菜不足の私は、こうした品をいつも選びます。
魚が美味しいお店ですが、小鉢のレベルも高いのです。
好物の穴子。
宮島口のうえのを思い出します。
もう西日本への旅は、叶わないのでしょうか。
「小鍋ですから、そんなに大きくないですよ」
と奥さんが言うので、かき味噌鍋を頼んでみました。
グツグツと煮えています。
実に美味しそう。
お酒は赤霧島のロックに切り替えました。
今日は珍しく、少し空席があります。
鍋には大きな牡蠣が五個。
広島や日生に何度も牡蠣を食べに行った、楽しかった旅の思い出が、走馬灯のように私の脳裏を駆け巡ります。
実に大ぶり。
味噌仕立ての味がなんとも牡蠣に合います。
ここに来たら魚。
いつもはお造りが多いのですが、今日は寒ブリ味噌漬が気になりました。
いい焼色です。
脂ののった寒ブリがしっかり締まって、実に美味。
やはりランチの味噌ラーメンが相当堪えています。
大阪ナンバーワンだと思っているこの店のだし巻を頼みたかったのですが、取り置いてもらっていた鯖棒寿司のことを考えると、それは断念せざるを得ませんでした。
脂ののった鯖を絶妙の浅締めにして巻いた棒寿司。
夏場は食べられないこの名物料理を最後に食べることが出来て
「転勤が冬で良かったな」
と思いました。
料理も食べ終わり、私の目の前には赤霧島のロックグラス。
この一杯を飲み干したら、私はもうこの店にお別れしなければなりません。
しつこく継ぎ足す自分が、なんとも未練たらしい。
「どうもお世話になりました。これはうちが開店した時に作ったタオルなんですけど、お餞別で。プレミアが付いてるとか付いてないとか言われてますけど、毎朝これで顔を拭いて思い出して下さい」
と奥さんが冗談っぽく笑いながら渡してくれました。
「もったいなくて使えませんよ。大切に取っておきます」
普段は寡黙なご主人も、厨房から声をかけてくれました。
「本当にお世話になりました。ブログのおかげでお客さんも増えました」
「いえいえ。でもお役に立てたのなら良かったです。こちらこそ美味しいお料理をいつもありがとうございました」
奥さんが、いつものように表まで見送りに来てくれました。
「また出張とかあったら、是非寄って下さい」
「ありがとうございます。もちろん」
私は何度も頭を下げ、奥さんにご挨拶。
離れがたい気持ちを断ち切って、歩き始めました。
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