2024年3月5日火曜日

【ディープ蒲田ではしご酒① 蒲田の昭和遺産「鳥万」。4階建てのタワー居酒屋で魔界迷宮飲み】

 

先月に続いて、出張で上京したKさんからお呼びがかかりました。
あいにくの雨ですが、今回Kさんが宿を取ったという蒲田で飲むことにします。
前回の大井町はまだしも、蒲田駅前の飲食店街のビジネスホテルとは女性らしからぬチョイスですが、出張費が厳しいという世知辛い話です。
彼女が「アド街」の蒲田特集で見て、行ってみたいという「鳥万」からスタートすることにします。
蒲田で飲むのは初めてだというKさんに、そのディープぶりを知ってもらうには格好の店なので、ご案内することにします。
すっかり色あせた外観ながらも、往時は居酒屋の概念を覆すタワー型大衆酒場であったであろう店構え。


入口で
「二人です」
と告げると、やり手婆から
「4階!」
とのご沙汰。
どのフロアに何席空いているかわかりもしないのに、とにかく4階。
上から詰め込んでいるのではないか、といつも思ってしまいます。
もちろん昭和の4階建てですから、エレベーターなどあるはずがありません。
消防のポスターが貼ってあるものの。消防法は大丈夫なのか、という狭い螺旋状の階段を上って4階へ。
もう何があっても後戻りはできません。
「八甲田山」というワードが脳裏をよぎります。


急な階段を4階までなんとか登り切りました。
座敷は苦手な私ですが、ここで一階の椅子席に座るのは至難の業。
一人でもない限り、高層階の座敷に強制的に流し込まれるシステムです。
ディープ蒲田を代表する魔界迷宮酒場らしい雰囲気と客層に、百戦錬磨の浪速女のKさんもタジタジです。
非常の際は6階まで上がって隣のビルに飛び移るという避難経路の貼紙もあって、いやが上にも緊張感が高まる酒場で、おちおち酔っていられません。


壊れて用を為さない下駄箱の横に置かれている使い回しのスーパー袋にびしょ濡れの靴を入れ、傘と一緒に抱えて座敷へ。
ペコペコの薄畳の床を踏みながら苦手な座敷に正座で座ります。
私は胡坐がかけないのです。
片言の日本語を話す中国人女性店員が運んできた袋菓子が突き出し。
とりあえず黒ホッピーを頼みます。


バイスサワーを頼んだKさんと乾杯。


メニューをチェックします。
大衆酒場らしい、オールマイティな幅広いセレクション。
凡そ無いものは無い、と思えますが、実は無いものが沢山ありました。


今日は冷えるので鍋を頼むと
「ナベハデキマセン」
と片言の日本語で言われます。
壁にわざわざ新しく貼ってある季節メニューなのに、です。
他にもできないのがやたらとあって、注文に困ってしまいます。


そんな中国人お姉さんの「ナイナイ」コールをかいくぐってスパゲティサラダ塩だれ奴焼き鳥おまかせを頼みます。
このオーダーだけでかなり手間取ったことも付記しておかなければなりません。
蒲田は日本のはずなのに、なかなか難しい。


お互いの近況よりも、この店のすごさをトークしているうちにホッピーは二杯目。
ナカをお代わりすると、カチカチのグラスが出て来ました。
どう考えても二回分あります。


最初に頼んだ鳥万名物の鶏の唐揚げがようやく出て来ました。


胸肉ともも肉。
ケンタッキー・フライド・チキンが日本に上陸する前からあったのでしょう。
いろいろと思うところはありますが、これが旨いので許してしまうのが、鳥万が魔界迷宮たる由縁。


カチカチのナカで三杯目の黒ホッピーを飲み切ってから河岸を変えることにします。


ずっと正座していたせいで脚がしびれて、立ち上がったとたんにずっこけてしまいました。
4階のお客さん皆が振り返る、相当間抜けなオジサン。
火事の時は6階まで上がって隣のビルに屋根づたいに避難するように書かれた貼紙の指示に従う局面が今日も無かったことに感謝しつつ、痺れる脚で急な階段を1階までソロリソロリと降りていきました。

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夜総合点★★★☆☆ 3.3

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