私が育った頃の大阪はラーメン不毛の地。
せいぜい金龍が珍しかったくらいで、それとて特に旨いわけではなく。
東京でもこの20年で様々なラーメン屋が台頭し、今や麺もスープも百花繚乱。
私も相当食べ歩きましたが、複雑なスープとその製法の薀蓄に辟易することもあります。
本来ラーメンは庶民の食べ物。
シンプルに旨ければそれでいいではないか、と。
大阪に来てそんな東京に負けず劣らず健闘しているラーメン屋をいくつも発見して驚きましたが、今日はそういった新進気鋭の店ではなく、温故知新がテーマ。
残業帰りに寄ったのは、そんな大阪ラーメンの歴史を語る上で欠かせない揚子江ラーメン 本店。
梅田駅の東、猥雑な阪急東通商店街とJR環状線に挟まれた角田町の裏通りの一角に隠花植物のように咲く昭和ラーメン屋。
つい先週末同期と来たサントリーバーおくだと同じビルの1階。
再開発計画があるのか、ほとんどのテナントが引き払ったゴーストビル。
食品サンプルのショーケースと奇妙な暖簾が物悲しくもあり。
店内は完全に昭和にタイムスリップ。
もちろん値段も昭和価格。
ラーメンが550円です。
ラーメン屋とは思えない奇抜な装飾、純喫茶を居抜きで改造したような雰囲気です。
磨かれたステンレスのテーブル。
リノリウムの壁が場末の喫茶店のよう。
卓上の調味料。
私はラーメン大盛と餃子を頼みました。
店内を眺め渡し、写真を数カット撮ったと思ったらラーメンが出てきました。
2,3分でしょうか。
これは早い。
ラーメン丼の直径はかなり大きいですが底が浅いので見た目ほどのボリュームではなさそう。
写真を撮っているうちに餃子も登場。
これまた早い。
王将よりも明らかに早いオペレーション。
春菊がのっているのが不思議ですが、これは揚子江ラーメンの特徴。
薄切りのチャーシューは仕掛けのないシンプルな味。
博多ラーメンのような細麺なので、茹で時間が短いのでしょう。
スープは鶏ガラベースのシンプルな塩味。
今時の複雑な豚骨魚介などどこ吹く風といった潔さ。
卓上にある揚タマネギをスプーン一杯投入します。
少しにんにくの風味がします。
一方の餃子はにんにく抜きだそうです。
細麺はスープをみるみる吸っていくのですぐに伸びていきます。
正しい使い方かどうかわかりませんが、付いてきたスープを丼に投入し絡まりかけた麺をほぐします。
初めて食べた揚子江ラーメンは食べたことがないのに懐かしさを感じる味。
それは昭和の時代からこの梅田の変遷を見守ってきた歴史が感じさせる錯覚なのでしょうか。
お会計をレジで済ませると無期限で使用出来る20円割引券をくれました。
これを使えばラーメン530円。
驚きの価格設定。
再び路地に出て家路へ向かおうとすると、すぐ近くの一風堂で若者の行列が。
温故知新に相応しい調査ポイントだったな、とひとりごちました。
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