元々今日はある目論見がありました。
それは久しぶりに京成立石で宇ち多”と蘭州のゴールデンハシゴをしようというもの。
本社勤務時代は私の夜のホームグラウンドの一つだった立石。
ディープなセンベロタウンは私の居酒屋巡りの原点でもあります。
20時半までに切り上げれば21時20分東京発の最終新幹線に間に合います。
留守宅に帰ることになったので、そのリミッターは外れました。
少なくとも時間の制約は無くなったので、落ち着いて京成立石を回れそうです。
本社での仕事が長引き会社を出たのは18時。
立石までは30分。
一軒目に行くつもりの宇ち多”は19時過ぎには売り切れ閉店してしまう関東一のもつ焼きの人気店なので、かなり焦り気味でした。
南口を出ると、持ち帰りコロッケでいつも行列の愛知屋。
変わらない風景に安心します。
南口の商店街を抜けて歩きます。
関東もつ焼きファンの聖地、宇ち多”。
それほど行列は長くありません。
10分位で入れそうです。
消費税増税に合わせて価格も改定。
今まで長い間同じ価格だったので、将来の消費税10%を見越してということなのか、かなりの上げ幅です。
大鍋からもつ煮込みを掬い入れるご主人。
私の順番は次になりました。
裸電球にコンクリ打ちっぱなしの土間、という狭い店内。
さして広くない店は、戦後の匂い色濃く残す風情です。
店主の息子さんの指示に従い着席します。
まずはビールともつ煮込みを。
「ビールは大!?小!?」
「だ、大で・・・」
しまったな、小のつもりだったのに久しぶりの迫力に気圧されてしまった。
早い時間にくれば、フワや骨などの希少部位を多めに入れてらうことも可能。
だから通は早い時間に来るのですが、サラリーマンはそうもいきません。
久しぶりの宇ち多”は、暗号のような符牒を忘れかけていて、うまくオーダーできるか不安でした。
座った場所は一見強面で伝法な息子さんの担当エリア。
「今日は何がありますか?」
この時間は売り切れの部位が多いのでまず確認。
「シロ、ガツ、アブラ、レバー」
とぶっきらぼうな返事。
「ガツとシロ、タレでよく焼きで」
「ガツとシロ、タレでよく焼きで!!」
私のオーダーと店員さんのオーダーが寸分違わなかった時は、それは私がうまくオーダーできたということ。
炭火の前で見事な焼きを担当するのは女性。
何度来てもこの方の素性は謎なのですが、娘さんなのでしょうか。
一人で来たときは、この人の腕さばきと、狭い店内を一升瓶と小皿を抱えて行き来する伝法な店員たちを眺めながら一杯飲るのが楽しみです。
もちろんここに来たらこれを飲まないと始まりません。
梅割り。
焼酎甲類を梅エキスで割った謎の焼酎ストレート。
目の前のグラスに宝焼酎を一升瓶から注ぎ入れ、絶妙に受け皿に零した所でもう一方の小脇に抱えていた梅エキスを数滴垂らします。
このパフォーマンスも私は大好き。
「レバタレうんと若焼きで」
少しオーダーの調子も戻ってきました。
レバーをタレで、表面を炙る程度で、という意味です。
中は完全に生。
外側と内側の固さの違いと温度差がこの若焼きの面白さ。
私が一生懸命写真を撮っていたせいか、お隣りの60絡みの常連さんが話しかけてきました。
「いいね、しっかり書いて宣伝してよ」
私がブログに書くであろうことがわかっているのでしょう。
「ありがとうございます。今日は久しぶりなんですよ、今は大阪に転勤で」
「私も若い頃は神戸に住んでてね。よく悪さしたもんですよ」
と話が弾みます。
これがこの店の楽しい所。
足立区から来たというお客さんが私に帰り際に一つおすそ分けしてくださいました。
ガツ生のお酢かけ。
一人だと食べれる種類も限られます。
返す返すもビールの大瓶を頼んでしまった自分が悔やまれます。
お口直しに「お新香生姜のっけてお酢」
狭いテーブルはこんな感じになってきました。
梅割りをお代わり。
仕事の疲れも日頃の憂さもじんわりと溶けていく至福のひと時。
「アブラ少ないとこ素焼きでお酢かけ」
アブラは脂身の多いところか少ない所を選べます。
もちろん選択可能な在庫があれば、ですが。
素焼きとはそのままタレも塩も付けないで焼くこと。
お酢をかけると脂身がさっぱりとした味に変わります。
食べ終わったお皿を重ねてスペース確保。
これは後でお会計する時にも便利なのです。
ここは焼き物は値段が同じなので、回転寿司スタイルでカウントするからです。
本日のお会計は1,980円。
ビールは小瓶で良かったな、その分別のもつ焼きが食べられたのに、とまた後悔。
「ありがとう!お待たせしてゴメンね!」
と伝法だけど実は優しい息子さんに声をかけられました。
東京の下町の良さがまだ残っている街です。
今日は大阪に帰らなくなったので、二軒目はどこに行こうかとブラブラと久しぶりの立石を腹ごなしを兼ねてパトロール。
私も炭水化物ダイエットのせいか随分胃が小さくなりました。
宇ち多”のそばのもつ焼ミツワ。
ここも私はかなり好きな店。
私が知る限り東京で一番旨いたこ焼大ちゃん。
南口の線路沿いには立ち食いの串かつが二軒。
よく通いましたが、大阪の串かつを知ってしまった今となっては残念ながらつい比較してしまいます。
踏切を渡って北口へ。
あまりにも有名な鳥房。
雛鳥の素揚げが名物の鶏肉販売店。
店の裏で食べれるようになっています。
今夜も行列。
ここは店を仕切るオバサンたちが厳しいことでも有名。
その奥を東に向かうと呑んべ横丁。
昭和が残るディープな一角はもちろん悪所でもあったのですが、京成線の高架化に伴い全て撤去、再開発されてしまうと聞いています。
江戸時代はもちろん朱引の外。
今でこそ東京都葛飾区ですが、その昔は田んぼの広がるのどかな田舎だったとか。
私がよく通ったおでんやもこの横丁の一軒。
再開発の前に一度ご挨拶に来ないと。
呑んべ横丁を抜けた所にあるオオバコの江戸っ子。
もつ焼きの人気店ですが、ここも女性スタッフの仕切りが厳しいのです。
その向かいにある酒処秀。
素晴らしい生ホッピーを飲ませてくれる店ですが、中を覗くと満席でした。
残念。
食い倒れの大阪でも旨い豚のもつ焼きと生ホッピーだけはありません。
今度は西に向かいます。
かつて青線だった一角。
一階がスナック、二階がちょんの間だった通りも、今は昔。
もちろん私が成人する遥かに前の話です。
女あるところに男あり、男あるところにお酒あり、ということでしょうか。
とっちゃんぼうや。
巫山戯た名前の店ですが、店内が料理のメニューがベタベタに貼られて壁が見えなくなっています。
安くて使い勝手がいいので、私のセンベロの巡回ポイントの一つ。
パトロールしましたがどうにもお腹が空きません。
無理して飲食することもないでしょう。
なぜならここで締めるからです。
東京の数ある居酒屋で最も好きな餃子の店蘭州。
居酒屋と呼ぶのは相応しくないかもしれませんが。
餃子を包みながら奥さんが声をかけてくれました。
「あら、帰ってきたの?」
「いえ、まだ大阪です。今日は出張」
「長いね」
まずは紹興酒を。
息子さんが注いでくれます。
もちろん注文は水餃子。
お腹がいっぱいなので一人前。
香菜をたっぷり載せてもらい、香醋で食べるのが奥さんに教わった私のスタイル。
烏龍茶玉子も貰いました。
卵好きの私がいつも食べるおつまみ。
紹興酒はもちろんお代わり。
自分ひとりだけのゆるりとした時間。
そして禁断の老龍口に手を出します。
高粱から作った白酒は42度。
この一杯で何度成田まで乗り過ごしたことでしょう。
せっかくだから締めのラーメンを食べていきましょう。
餃子が有名なお店ですが、ラーメンも素晴らしい味。
もちろんワンタン麺がベスト。
メニューにはありませんが、これも香菜を載せてもらいます。
今日ばかりは炭水化物ダイエットもお休みです。
醤油ベースの懐かしい味ですが、そこらの専門店など足元にも及びません。
餃子が美味しいのですから、ワンタンが美味しいのは当たり前。
2時間ちょっと、久しぶりの立石で大好きな店を巡る、呑ん兵衛の私には堪らないひと時となりました。
問題は無事に乗り過ごさずに帰れるか。
私の最寄り駅止まりの普通電車が運良くやって来そうです。
時間はかかるけれど、成田空港行きの特急はやめておきましょう。
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