2015年3月27日金曜日

「地獄の沙汰も金次第」とは言うものの、金の要らない地獄もある。野田阪神地獄谷の居酒屋「なごみ」

3月はどうしても仕事が遅くなります。
今日は私が最後に職場の電気を消して部屋を出ました。
「今日は地獄の気分だな」
と東西線に乗って海老江駅へ。
巨大な野田阪神交差点と阪神高速の高架が威圧的ですが、ここに地獄という名の天国があるのです。


新橋筋商店街を入ります。


商店街の店の切れ目にある狭い路地が、その地獄の入口。
今日は無事に帰ってこれるでしょうか。


路地の奥は戦後の闇市の香りが残る飲み屋街。


今日の一軒目は居酒屋なごみ
前回地獄谷に来た時に酒縁ゆるりで飲んでいて知り合った方から教わったお店に初訪問です。
ガラス越しに覗くと、この街らしく猛烈に狭い店。
でも空席が一つありそうです。
暖簾をくぐり、威勢よく引き戸を開けようとしたら、建て付けが悪いのか、うまく開きません。
中から奥さんが開けてくれました。
一見さんだと丸わかりの幕開け。


下町居酒屋探検家の私ですが、やはり初めての店は緊張します。
もちろんこの街に知らずに迷い込む一見などはおらず、店内にいた常連さんやご主人からも猛烈な視線を感じました。
「こんばんは。初めてなんです。よろしくお願いします」


「50も半ばのオッサンがよろしくお願いしますもないよなぁ」
とは思いながらも、 生ビールを注文。
下手に常連気取りなどせず、さっさとゲロった方が手っ取り早いのです。
「ゆるりの常連さんに聞いてきたんです」
と言えばもう場の空気は和みます。
「ひとりなんで、色々飲み歩いてるんです」
「え、独身なん?」
「いえ、単身赴任で」
「ええなぁ。羨ましい」
大阪の居酒屋では、お店の方や常連さんが、見知らぬ客の素性を聞きたがります。
興味もあるのでしょうが、親しくなりたいという気持ちの現れでもあります。
剥かれる前に、自分で剥いてしまったほうが懐に飛び込める、というのが大阪暮らし3年の経験で得たもの。
どうやら唯一のスーツ姿の私も、なんとか皆さんに認めてもらえたようです。


「今日は空豆の塩茹がありますよ」
と60代と思しき店主から勧められましたので、それを。
私の右隣の常連さんは
「えらいでっかいな、この鞘は。俺のんよりは小さいけど」
とお決まりのネタ。
入口横のカウンター席に、まるでお客さんのように陣取っている奥さんから
「あんたはいっつもそれやな」
と窘められています。


しかし鞘が大きいからといって空豆まで大きいわけではありません。
それは常識。


空豆を食べながら、この店の空気や段取り、作法を掴もうと五感はフル稼働。
それもまた下町居酒屋探検の楽しみ。


まずはメニューを研究します。
驚くほど低価格。
左隣の常連さんが摘んでいる紅鮭頭焼が380円。
「普通は6、700円取るよな」
と思いながら
「この地獄は金が要らないんだ」
と納得。


作りおきの一品はネタケースに入っています。
その奥には小さなコンロ、棚の上には電子レンジ。
激狭スペースを工夫して活用しているのはこの街の店の特徴です。


箸置きがなぜか大量に。
そもそも5、6人しか入れない店で、こんなに箸置きは要らないのですが、そういう謎のこだわりを見つけるのが下町居酒屋探検の面白さでもあります。


生まぐろ中落ちを頼みました。


なかなか旨い。
「380円だもんなぁ。余計旨いよなぁ」


酒を切り替えます。
芋のロックにしました。


店主が取り出したのはかのかの紙パック。
「いいなぁ、かのかなんだ」
そんな風に喜ぶ私も相当な変わり者かもしれません。 
氷は少な目で、ほとんどストレートです。


お店はいつの間にか満席です。
といっても5人しか座れないのですから、すぐに満席になるのです。
右隣の常連さんは相当面白い方で、聞いているだけで酒のアテになります。
どうやら店舗設計、施工のお仕事らしく
「俺もCADやろう思て、Adobe買おかと思てん。それやったらパソコンもメモリとかCPUとかええのんに変えなあかんやろ。そんなんでなんぼかかるんかな、って調べててんんけど、よう考えたら俺パソコンないから、まずパソコン買わなあかんって気がついてん」
「あんたはいっつも話が逆やな。結果が先かいな」
とまたお母さんに窘められています。
「男はな、結果を求めるんや。結果が全てやねん。特に女に関してはな」
「まとそれかいな」
と再びお母さんが呆れます。
私も思わずかのかを吹き出しそうになりました。


「今日は50円のメニューがありますねん」
 と店主。
何かと思えば私の好物の茹で卵
もちろんお願いしましょう。


ずっと気になっていたカウンターの上の塩。
こんなにはいらないはずで、このミスマッチもこの店の謎の一つ。


カレー塩にしてみました。
カレーと卵は黄金律だからです。


茹で卵を食べながら地獄の底のこんな狭い店で、見知らぬ人と語り合いながら飲んでいる私。
4年前には想像もつかなかったことですが、残りも少ない人生ですから、好きなことをして楽しむに限ります。


「まあ、もう一杯飲んでいってくださいよ」
と左隣の常連さんに引き止められます。
私と同世代でしょう。
チェーンスモーカーの彼は呂律も怪しくなっていますが、なんとも憎めない感じ。
「この柚子の汁を入れると旨いんですよ。芋には合わないと思うんですけど、麦なら合いますよ」
そう言われたら麦にしないわけにはいきません。
店主に麦の水割りを所望。もちろんそれもかのかでした。


料理も酒も安いですが、ここは常連さんとの会話が楽しい店。
店主も飄々としているようで、ちゃっかりとツッコミを入れてきます。
明るい奥さんもナイス。
この商売を初めて10年だそうで、意外と浅い歴史に驚きました。
店が客を呼び、客が店を作る、まさにそんな店。

すっかり打ち解けて、店主ご夫妻に
「また来てください」
と見送られ、再び地獄の谷底に下り立ちました。




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なごみ居酒屋 / 野田阪神駅野田駅(阪神)海老江駅

夜総合点★★★☆☆ 3.1