後は明朝、布団や水回りのものを片付けるだけ。
明日の朝は早起きしなければなりませんから、深酒は禁物。
そんな今夜、まさに大阪最後、天満最後の晩餐はここしかないと思っていました。
天神橋筋五丁目商店街の串かつ七福神。
大阪のソウルフードは数ありますが、その中でも串かつが一番好き。
一人でも気安く入れて、、食べる量も、飲む量も、そして時間のコントロールも自由自在。
もちろんお値段もリーズナブルで、まさに浪速っ子の合理主義を体現したものと言えます。
そんな串かつの名店の中でも、私は地元天満のこの店が一番のお気に入りです。
自宅近くの南森町にも、天満駅前にも支店があり、最近はこの本店の横にも、もう一店舗できましたが、やっぱりこの店が一番風情があります。
生ビールは最初の一杯が100円。
鰻の寝床のようなカウンターだけの狭い店。
いったい何回食べに来たことでしょう。
名前を覚えられているほどの常連ではありませんが、顔は覚えてくれています。
多分、食べていない料理はないはずです。
今日も生ビールから。
私の隣のお嬢さん二人連れは、中国からの旅行客。
いつから出来たのか、英語のメニューで、店員とお互いに片言のやり取り。
串かつもアジアンフードに昇格したようです。
とりあえず、どて焼き。
一味を振って。
少し甘い味噌の味が、なんともビールに合います。
生キャベツが出てきました。
東京にも大阪風の串かつ店はありますが、キャベツのお代わりでお金を取られることがあります。
大盛、お代り自由の食文化とも、これでお別れです。
まずはふぐとはも。
大阪らしい食材から。
ソースの二度漬けはお断り、というルールも私にとってはごく自然なもの。
串かつはネタもさることながら、衣や揚げ方が大きく味を左右します。
アメリカンドッグのような厚みのある衣の店もありますが、私は薄めの衣で、サクッと揚げるタイプが好き。
もちろん個人の好みですから、優劣をつけるつもりはありませんが、私はこの店の衣と揚げ加減が大好きなのです。
いつも頼むしいたけ。
串かつのネタとしては、私の中ではかなり上位。
もっとも、上位が多すぎて選択に困るのですが。
基本にして、定番の牛カツ。
3本で300円。
大阪は牛文化。
串かつといえば、牛が当たり前ですが、ネタが増え、豚を出すのも当たり前となった今では、「牛」「豚」の区別を表記する店が増えたようです。
なんとも頼りな薄い牛肉に衣をつけて上げれば、たちまち腹持ちのいい料理になります。
戦前戦後の混乱期、安くて旨い料理を庶民に提供してきた浪速の食文化。
プレーン酎ハイに切り替えました。
大阪で唯一苦労したホッピーの代用飲料として、味の付いた甘いお酒が苦手な私のチョイスは、いつもこれでした。
チューリップとは手羽元のこと。
串に見立てた骨付き肉は、串かつのネタとしても面白い。
もちろん、ジューシーで柔らかく、実に旨い。
特にこの時期はマストアイテムです。
牡蠣の名産地である広島や岡山に近い大阪に暮らせたことで、今までの人生で一番たくさん美味しい牡蠣を食べることができました。
そんな食べ歩きの旅を思い出します。
海のミルクとはよく言ったもの。
仄かな甘みすら感じる肉厚の牡蠣。
三杯目は角ハイボール。
そろそろ締めくくり。
玉子、紅しょうが、ウインナー。
赤ウインナーも大好きですが、ここのピリ辛のウインナーもなかなか。
この店の玉子はうずらではなく鶏卵。
大好きな茹で卵が丸ごと串かつになっています。
これも、毎回欠かさず食べたネタ。
紅しょうがが、天ぷらや串かつの人気のネタだとは、転勤してくるまで知りませんでした。
今では私の串かつの締めのアイテム。
口もさっぱりします。
とうとう最後の一串となりました。
ここ数日、未練たらしいことが多すぎます。
この紅しょうがを食べ、角ハイボールを飲み干したら、私の大阪最後、天満最後の晩餐は終わりです。
いつまでも串を見つめていても仕方ありません。
私は、残った紅しょうがを一気に食べて、角ハイボールを飲み干しました。
「どうもありがとうございました!また宜しくお願いします!」
と店員たちに見送られ、私は天神橋筋商店街の雑踏の流れに身体を滑り込ませました。
「また」とはいつなんだろう、と思いながら。
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