「大衆酒場 岩金」を5年振りに訪問し、遅いスタートの酒場巡りとなった今宵の東向島。
曳舟側通りを八広駅に向かいます。
かつては荒川駅と呼ばれた八広駅の駅前、ゆりのき橋通りに面した「日の丸酒場」。
これ以上無い、堂々たる店名。
この通りを鐘ヶ淵に向かうまでの両側には、下町ハイボールが楽しめる名店が数多くありますが、私は駅前にあるこの店が、使い勝手が良くてお気に入り。
電車の時間に合わせられるので、この辺りで飲んだ時の仕上げはこちらです。
前回来たのはコロナ禍直前の2019年。
やはり岩金から流れてこちらに来たのです。
暖簾はいつも逆にかかっています。開店前かラストオーダーを意味する「逆暖簾」ですが、どちらでも無いのに逆なのを確かめようと思いながら、いつも酔っているので聞くのを忘れてしまいます。
その逆暖簾を潜って店内へ。
先客は5人ほど。
ご常連と思しき皆さんが、カウンターにお座りです。
岩金は女将以下店員さんは皆さん女性なのでガールズバーと呼んでいますが、それに対してこちらはボーイズバー。
お茶目で愛想の良いご兄弟がカウンター越しに接客してくれるのです。
奥の厨房を仕切るのはお母さん。
L字カウンターの中ほどのスペースに座って、ボールを注文します。
下町ハイボールの略称で、この辺りではハイボールと言えばウイスキーではなくこちらのこと。
この店は炭酸を先に入れ、そこにナカを注ぐスタイル。
表面張力の限界まで注ぐ素晴らしいテクニックなのですが、肝心の原液がちょっと足りなかったようで
「あ、ちょっと足りなかった」
と継ぎ足してくれました。
継ぎ足さなくても良いほど注がれていたのですが。
もちろん口を近づけて吸わないことには、カウンターから下ろすことはできません。
これがいつも楽しみ。
岩金でそこそこ摘まんだので、さほどお腹は空いていませんが、ちょっと冷えるので温かいものを選びます。
肉豆腐。
しぐれ煮のように甘辛く煮詰めた肉の乗った煮込み豆腐の濃い味に、ボールも進みます。
もう一品はかき鍋。
この季節ならではのカキは大好物。ひとり酒に丁度いいサイズ。
ボーイズが調味料をいっぱい出してくれました。
本当にサービス精神溢れるご兄弟。
年季の入った店ですが、ステンレスの厨房はしっかり磨きがかかっているのも好印象。
グツグツと煮立ってきたら、食べ頃です。
山ほど調味料を出してくれたのに
「お酢と醤油が美味しいですよ」
と進めてくれるのが、なぜか可笑しい。
もう一杯、下町ハイボールを頼みます。
今度は一発で表面張力をキメてくれました。
ご常連同志の会話に、初めて会ったと思われるお客さんも絡んで、旅行談義が盛り上がっています。
私の両親の故郷の山口や、私の出身地の大阪の話題が出るのでトークに参加したい気分ですが、そろそろ帰らないと明日の仕事に差し障りそうです。
電車の来る10分前にセンベロのお会計を済ませ、ボーイズたちに見送られて逆暖簾を正面から潜りました。
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